その後、私達は病院を出た。
まずは美紅を送ってもらって、その後、消防署の方に顔を出した。
「おぉ!達也さん!体大丈夫ですか??」
と元気よく声をかけたのは村田さん。
「うん、大丈夫だよ。」
「あなたちゃんも、この前はありがとうございました。」
と挨拶してくれた。
「いーえ、私も楽しかったですから。」
にっこりと返すと、達也さんは驚いていた。
あ、そっか、あの日のことも忘れてるんだね…
「えっと、あなたちゃんは誰と知り合い?なんかいっぱいいない?」
戸惑いながら聞いて来た。
なんだかあたふたしてて可愛くてついふふっと笑った。
「九条さん、清水さん、松本さん、村田さんです」
「なるほど、なるほど。」
少し話をして、すぐに出動要請があったようで私達は帰る事にした。
「送ってくださってありがとうございました。」
「じゃあ、またね。なんかあったら連絡しなさい。」
「はい。」
九条さんは私達を家まで送ってくれた。
上がっていくかと聞いたらこの後用事があるから。と断られた。
でも、気を使ってくれたのかな。
「達也さん、改めてよろしくお願いします!」
「うん、よろしくね。」
「あなたちゃんの部屋はここ?」
「はい、そうです。」
「わかった。」
「何かわからないことがあったら聞いてくださいね。」
「うん。ありがとう。」
達也さんの記憶が無くなってから、3日が経った。
今は3日目の夜。
明日になったら4日が経つ。
だんだん、不安になってくる。
まだ3日なんだけど、もし思い出してもらえなかったら…。
様々な想いが混ざり合う。
ぐちゃぐちゃな頭のまま眠りにつく毎日。
今日もまた気がついたら眠りについていた。
夜中、目が覚めた。
喉が渇き、リビングに水を飲みに行こうと達也さんの部屋を通りかかろうとした時、
少しだけドアが開いていた。
覗いてはいけないと思いながらも覗いてみた。
何を書いているんだろ。
日記かな…?
何かをノートに書き込んでいた。
気になる…。
達也さんが書き終わり、立ち上がろうとした。
喉が渇いていたのも忘れて急いで部屋へ戻り、眠りについた。
ピピピッピピピッピピピッ
「うーん、」
「お弁当作らなきゃ。」
キッチンへ向かい、いつも通りにお弁当を作る。
そろそろ達也さんが起きてくるかな?と思って、朝ごはんを作り始めた。
まだかな?と時計を見ると7時30分。
「え!?」
うそ!達也さん起こさないと!
「達也さんー!朝ですよ〜」
と部屋を覗くと達也さんはもう起きていて、ベッドの上に座っていた。
「達也さん、どうかしたんですか?どこか具合でも?」
「あなたちゃん?」
「えっと、その、あなたちゃん…なんで俺、ここに居るのかな?」
「え?どう言う事…」
また記憶喪失…?
「俺、現場で事故った気がするんだけど…。」
え…。
うそ…。
私は急いで先生に電話をした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!