「えっ…」
ほら、
やっぱり達也さんはそう言われたら困るでしょう?
「好き。私、達也さんの事がす…」
え…。
何が起こって…。
私は腕を引っ張られ、達也さんにキスされた。
お互いの顔が離れる。
「達也さんっ」
再びキスをされた。
今度はさっきより長かった。
「達也さん、なんでっ…」
「俺もあなたちゃんの事が好きだから。」
目をしっかり見て言ってくれた。
「嘘…」
嬉しすぎて涙が止まらない。
「でもっ」
「あなたちゃんは、家族だからだめって言うんでしょ?」
うん。と私は頷く。
そして、達也さんは優しく抱きしめてくれた。
「ずっと隠しててごめんね。実は俺、あなたちゃんの叔父でもなんでもない。」
「本当は赤の他人なんだ」
「え…?」
どうゆう…
「あなたちゃんのお父さん。慎太郎さんはじいちゃんの部下だったんだ。」
「先生の…?」
「うん。じいちゃんは医院長だし、よく病院へ連れていかれてたんだ。」
「その時、慎太郎さんがいて、よく話をしてたんだ。だから俺は慎太郎さんの事を尊敬してる」
「ここしばらく会えてなかったんだけど、交通事故で亡くなった。って聞いて…」
「お葬式に行ったんだ。その時見たのが、あなたちゃん。」
「俺の親が、死んだ時の俺に似ていた。親が死んでもまだ受け入れられない。」
「どこか一点を見つめて、じっとそこから動かない。そんなあなたちゃんをみて、」
「俺は決めた。あなたちゃんと一緒に暮らそうと。」
「そうだったんですか…」
「それから暮らしたは良いものの、どんどん君のことが好きになって行った。」
「私もです。」
私達は手を緩め、私は達也さんを見上げ、達也さんは私を見下ろし、見つめ合った。
うふふっとふたりで笑い、おでこをコツンする。
幸せ。
達也さん、好きです!
「じゃあ、とりあえず帰ろうか。帰ったら、ゆっくり話そう。」
「はい!」
私達は手をつなぎ、幸せな気分のまま家へ帰った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!