そう言って、深々と頭を下げる八戒さん。
あの後、何とかカラースプレーの装置は止めたものの……三蔵さん達は見るも無残な姿になってしまっていた。
原因となった悟空くんに対して憤る三蔵さん達。そんな彼らをなだめたのは、響也くんだった。
三蔵さん達……いきなり現れた見知らぬ一行をそう言って、正式に劇場に招き入れたのだ。
三蔵さん達は本当に助かったらしく、私たちにいろいろと自分たちのことを話してくれた。
三蔵さんの持つ経文を狙う紅孩児さん達と戦っている最中、気が付いたらこの劇場にいたらしい。
紅孩児さんと独角兕さん。この二人っていわゆる……敵側の人物のはずだよね……
それなのに……
そう言って、矛を収めてくれたのだ。
今、彼らはカラースプレーで汚れた体を洗うため、シャワールームにいるはずだ。
カンパニーには、レッスン後の汗を流すために大きめのシャワールームがある。
今、向かった八戒さんを含め、六人が一斉に使っても、問題ない大きさだ。
ちょうどその時、衣装班の船越くんと甲斐くんが可動式のクローゼットをひいて事務所へと飛び込んできた。
クローゼットの中には、以前公演で使った衣装がたくさん入っている。
確かに船越くんの言うとおりだ。でも、中には「これは絶対着ないだろう」と思われる奇抜な衣装も混ざっていた。
バスタオル姿の三蔵さん達がシャワールームから出てきたのを見て、慌てて私は事務所を出る。
煙草をグシャッと潰しながら、三蔵さんが言った。
事務所の中から、楽しそうな会話が聞こえてきた。
ーー数十分後
三蔵さん達の驚異的な食事ペースに、私はてんてこ舞いになっていた。
陽向くんと仁さんが、料理当番を代わってくれたおかげで、やっと一息ついた私は、紅孩児さんと独角兕さんの姿が見えないことに気が付いた。
ーーその頃、カンパニー最寄りのスーパーでは。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。