三蔵さん達の食欲がやっと落ち着いた頃、買い出しに行っていた伊織くん達が戻ってきた。
そう、三蔵さん達がいきなり夢色カンパニーに現れた原因は、まだ何もわかっていない。
紅孩児さん達が事務所に向かおうとしたその時。
ロビーからガラスの割れる大きな音が聞こえてきた。
事務所ではーー
ーーロビーに向かおうとした私達を止めたのは大工さんだった。
三里くんに促されるまま、地下への階段へ向かうと野木さんと相木さんが皆を誘導していた。
階段を降りると、キャストのみんなが集まっていた。その中には三蔵さん達もいる。
三蔵さんが煙草をふかしながら呟いた。
妖怪がこの劇場を襲った理由は、中に三蔵さん達がいるから。
でも響也くんは、三蔵さん達を追い出したりせず、地下にかくまい、一言も責めなかった。
三蔵さんは淡々と現状を告げる。悟空くんが何か言いかけたが、悟浄さんに止められた。
黙って三蔵さんの言葉を聞いていた響也くんは、……意を決したように、拳を握り締めながら言った。
私は、三蔵さんに一言、物申そうと思って前に出た。でも、八戒さんによって止められてしまう。
響也くんの言葉に、その場にいた夢色カンパニーのキャスト全員が頷いた。ーーもちろん、私も。
静寂を破り、蒼星くんが声を上げた。
西園寺雅輝くんは、いつもは蒼星くんの事務の手伝いをしているカンパニーでも最年少のキャストの一人だ。
地下の扉を開けて飛び出そうとする蒼星くんを響也くんが必死に止めた。
全員の視線が三蔵さんに集まる。
三蔵さんは、響也くんに止められたはずの煙草をゆっくりとふかし、溜息をつくように言った。
三蔵さんが銃を構えると同時に、地下の扉が開いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。