暫く有岡からLINEが帰ってこないままでずっとスマホの
画面を見ながら待っていた。
待って居ると向こうから1人の背の小さい男がこちらに向かい
歩いてきた。
その男の顔を良く見ると有岡の顔にも見えた。
「誰?…伊野尾さん?…」
と問いかけても返事がない。
諦めかけて有岡からのLINEを待とうとしたその時、
?「あなた、こんな所に居たんだ…」
「大貴?…大貴なの?」
?「そうだよ、大貴だよ」
声、顔すべて有岡だった。
あなたは有岡だと思い込んで有岡に飛びついた。
「良かった!大貴!助けに来てくれたの?」
?「──ははっ、なんてね」
「へ?」
ぼんっと音がなり煙がでた。
煙がおさまり顔を除くと伊野尾だった。
「伊野尾さん…」
伊野尾「──騙された?僕以外にセンスあるでしょ!
それよりもう夜だよ?一緒に寝よ?」
「…」
あなたは黙り込み思わず伊野尾に手を挙げた。
手を挙げた後、あなたはやりきった顔をしていたが、
後々考えてみれば此処は奴隷の國。
指示された事以外はしたら駄目。
指示されていないことをすれば……
伊野尾「──指示されてない事したね…もう一緒帰れなく
なるよ?いいの?…ってかキミはもう帰れない」
「え……」
伊野尾「──今、キミはここに来て1年たった…後11年
頑張ってくれる?…」
「えっ…一生帰れないんじゃないんですか?…」
伊野尾「──キミだけ特別!」
「伊野尾さん……!」
あなたは声を上げ泣いた。
その泣き方は有岡にも見せた事がない泣き方だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。