あぁ、昨日あんなこと言っちゃったから、教室に入ったらどんな目で見られることか…
やっぱり、梨華に言われたのか…
そうして、友紀は封筒を出した。
それは、前見た封筒とは違う封筒だった。
それは、あなたに見覚えがあった。
あなたへ
今、あなたは何をしているのかな?
これを今、あなたが読んでいると言うことは、
きっと私は今この世にいないんだろう。
お前には苦労を掛けているかもしれないな。
この手紙もそんなに大きくはないから、
私が本当に伝えたいことを書くとしよう。
信じる道を生きなさい。
いつでも、何があっても真実は勝つ。
真実とは、美しく、恐ろしいものだ。
だから、逃げる者も大勢いる。
でも、あなたには、正しい道を歩いてほしい。
たとえ、どんなに困難だろうと
誤った道に進まないように。
ただし、誤った道に行っても、
心を入れ換えれば正しい道に戻ることはできる。
あの手紙は久しぶりに見た、私が見つけて母に持っていくと、母の顔が急に強張って私の手から手紙を取り上げた。そして、この手紙は見なかったことにしなさいって言われた気がする。何でだろう、とも思ったけれど、そのときの母の顔が怖くて何も反抗できなかった。それ以来、私は母の顔色をうかがいながら生きていることに違いない。だから、梨華に言い訳できなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。