翌朝、準備ができると玄関から出た
今日のお供はグミ
うわ、寒い…
10月入った途端こんなに寒いなら今年の冬はどうなるんだろう
聞き覚えのある声
落ち着いた、私の一番好きな後輩くんの声
サッカー部は毎日朝練があるはず
今日は無いのかな
早速気づいた彰都くんは袋をジッと見ている
でも食べたくなるのは分かる
何たって彰都くんの好きなパイナップル味のグミがあるから
グミはイチゴ、ブドウ、マンゴー、パイナップル味がある
パイナップル味を彰都くんに渡すとすぐに口の中に入れた
もぐもぐしてる所がまた可愛い
確かまだスナック菓子が3袋あったはず
コンビニで今日はスイーツ買って帰ろう
凛佳と幼なじみくんの家に近付くと丁度2人が出てきた
彰都くんも挨拶をする
4人で足を動かして学校に向かって歩き出した
幼なじみくんと彰都くんが言い合いしてるのを見て少し心臓が痛くなった
彰都くんは偉い
振られるって分かってても頑張っている
それに比べて私はまともな恋愛をしていないしする資格もないと思ってしまう
もし、彰都くんが私の彼氏になったら……やめよう
考えるのをやめて私は3人の会話に入っていった
学校につくと私は彰都くんの後ろをついていった
彰都くんの背中を叩くと いった! と声を上げた
普通の顔をしているけれど私には何故かわかった
彰都くんには笑っていてほしい
察したのか少し驚いた顔をした
私はそれだけ言うと自分の下駄箱に戻った
下駄箱にはまた手紙が入ってあった
封筒の色も同じ、封筒を開けて便箋を開くとそれは嬉しい言葉なんかじゃなくて恐怖心が走る内容だった
『ずっと見てるよ』
たったそれだけ
気持ち悪い、私は家で捨てようと鞄にしまった
何で直接声掛けないんだろう
私そんなに話し掛けづらそうな感じするかな
5時間目の休み時間彰都くんが私のクラスに来た
凛佳の元に行くと少し笑って
そう言った
弱々しい、彼らしくない
凛佳は わかった と返事をすると彰都くんは私を一瞬見て教室をでた
彼は今日私の親友の凛佳に告白する
結果は分かってしまっているけれど、それでも笑った顔が見たい
6時間目の英語の授業は彰都くんの事を考えて内容が入ってこなかった
元々わからないから聞いても入ってこないけど
放課後になると私は部活生でうるさくなったグラウンドに鞄持たずに行った
サッカー部のところを見ると1年生が走っている
3年生は朔先輩から色々情報を聞くからどの人がキャプテンかすぐに分かった
いかにもサッカー部って感じの人
相手は私に気付くと 誰? みたいな顔をしている
嘘だけど
よし、これで大丈夫
私はグラウンドから出てまた校舎に戻った
帰宅部の人が帰って静かになった廊下は少し不気味
何で学校って静かだとこんなに不気味なんだろ
なぜか1年の教室から八代くんが出てきた
中には誰もいない
あら、相手の子気の毒に
セフレなら喜んで受け入れてくれるのに
どうしてか彼女になりたがる
体の関係だけなら楽なのに
お互い必要な時だけ呼び合って寂しい時はえっちして寂しさを埋める
それが一番ラク
やることあるし
八代くんから誘われたが私は断ってまた自分の教室に足を向けた
教室につくと中には入らずドアに隠れた
こんな場面で教室になんて入れない
だって__
彰都くんが凛佳に告白しているから
予想ていた答えは正解だった
凛佳も気付いたんだ、あの幼なじみくん好きって
中学生の頃からの親友の凛佳は彼氏どころか好きな人も居なくて心配していた
でも幼なじみくんを好きになって安心した
やっとこの子にも好きな人が出来たんだって
凛佳の味方だから私は凛佳の恋を応援したい
2人が話し終わると凛佳は前のドアから教室に出ていく
気づかれないだろうと思ったとき凛佳が横を向いて目が合ってしまった
凛佳も少し悲しんでいた
私は口パクで 行って と伝えると ありがとう と口パクで来た
しばらくすると中から溜息が聞こえた
彰都くんがその場にしゃがみこんでいる
私もやっと教室に入っていくと鼻を啜る音が聞こえる
上を見上げて私を見ると涙を流しながらビックリした顔
私もしゃがみこんで彰都くんの隣に行くと彼の背中を ポンポン と撫でた
年齢以外の身長や体重、何もかも彼の方が上なのにどうしてか可愛く見える
泣いている顔が綺麗だと思った
彰都くんは暫くして泣き止んで私を見ると何故か笑った
人の顔見て笑うって失礼だな〜
人間誰しもなく
男だから泣いちゃいけない何てどこにもない
泣く事を我慢するなんてストレスが溜るだけ
スカートのポケットから飴を出した
彰都くんは素直に口を開けると私は彼の口の中にパイナップル味の飴を入れた
いつしか私にもしてくれたご褒美
今度は私の番
やっと、本当に笑ってくれた
その笑顔を見て確信した
私は彰都くんが好きだ
名前を呼ぶと はい? と返事をした
好きと言おうとしたが我慢した
今この状態で告白すると卑怯な気がしたから
彰都くんは部活に戻った__ 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!