第29話

幸せな家庭✱過去
701
2018/01/04 11:49
7年前、これはまだ私が幸せな家庭だった時__…




蒼依
ただいま〜!

放課後小学校から帰ってきた蒼依はランドセルを背負いながらリビングの扉を開けた
柚依
おかえりなさい、蒼依

食器洗いのためシンクに立ちながら柔らかな笑顔で言う人物は蒼依の母親の柚依(ゆい)


娘の少し嬉しそうな笑顔にも気付いた柚依は どうしたの? と口を開く


母親の安心する声に上機嫌でランドセルを開けクリアファイルから紙出し母親の前で2つ折にされたものを開く
柚依
わ〜、100点!

『泡宮 蒼依』と書かれた横には 100 という数字が書かれている


算数のテストでとった数字


それを見た柚依は食器洗いから手を止めて濡れた手をタオルで拭くとテストを受け取った
柚依
すごいね〜、蒼依
よく頑張ったわね、算数苦手なのに

小学校のテストで100点は当たり前という親もいる中柚依は違った


小学校だろうとテストで良い点を取れば褒め自分のように喜ぶ


蒼依はそんな母親の笑顔が大好きだ
蒼依
お父さんも喜んでくれるかな?
柚依
ええ、もちろんよ
帰ってきたら見せてあげてね
蒼依
うん!

蒼依はテストを母親に預けたまま洗面台に行き手を洗った


12月で更に冷たくなっている水に蒼依は顔をしかめる


洗い終わるといつものようにソファーに座りテレビを見る





18時45分のいつもの時間、リビングの扉が開いた
蒼依
おかえりお父さん!

スーツ姿で帰ってきた父親に笑顔を向ける
蒼一
おー!
蒼依ただいま!

蒼依の頭を撫でるとスーツを脱いでソファーに置くと自分も座った


父親の蒼一(そういち)は落ち着いた妻とは真逆で元気で明るい
柚依はソファーからスーツを拾い上げるとハンガーに掛けながら、
柚依
おかえりなさい、ご飯今から準備するわね

そう言った
蒼一
いつもありがとな
蒼依
ねぇねぇ見てお父さん

蒼依は母親にしたようにテストを開いて父親に見せた
蒼一
100点じゃん!
やるなー蒼依

蒼依の頭を撫でると本人は嬉しそうにした


すると蒼一はポケットに手を突っ込む
蒼一
蒼依、手出してみ

蒼依は何かわからず素直に両手を父親の前に出すと手のひらに1つのお菓子が乗った
蒼依
グミ?
蒼一
おう、頑張ったご褒美

それはいつも蒼一が持ち歩いているお菓子


蒼一はお菓子が大好きでいつもポケットや鞄の中にお菓子を詰め込んでいる


特に好きなグミは欠かせない
蒼依
ありがとうお父さん、大好き!
蒼一
うおおおお
俺も蒼依好きだあああ

自分の娘を抱きしめ愛情表現をする


父親に抱きしめられ母親に褒められる


蒼依は幸せな家庭に生まれてきた
蒼依
あ、そうだ
お父さん明日は早く帰ってきてくれる?!

明日は12月24日


クリスマスイヴだ


毎年泡宮家は母親の特製手作りケーキでクリスマスパーティーをする


今年もまたその時期になった
蒼一
当たり前だろー!
約束な?
蒼依
うん!
柚依
蒼依、お父さん、ご飯準備出来たから座って

柚依の言葉に2人はご飯の席へと移動した


それから3人で美味しく夜ご飯を食べた






23時
蒼一
おっ、蒼依寝たの?
柚依
ええ

ソファーに座ってお菓子を食べている夫の隣に柚依は座った
柚依
またお菓子?

テーブルにはクッキーやポテトチップス、それにグミが置かれている


ゴミ箱には空になったお菓子の袋が沢山入っていた
蒼一
柚依も食う?
柚依
太っちゃう

女性は何歳になっても身体の事を考え我慢をする


それは柚依も同じだ


柚依は蒼一の左肩に自分の体を預ける
蒼一
どうした?

笑って蒼一は言うと妻は静かに口を開いた
柚依
この年になって娘に嫉妬してるの
好きって言って私も抱きしめてほしいなー…

2人だけの時にしか見せない柚依の嫉妬心やちょっとしたワガママ


蒼一はそれが愛しく感じ柚依の顔をみた
蒼一
妬いてる顔可愛過ぎ
柚依
可愛くない
蒼一
ならその可愛さは俺だけの特権な

柚依の両肩を持って目を合わせ抱き寄せると、
蒼一

愛してる


幸せそうな2人の表情


蒼一の背中に腕を回した柚依
柚依
私も、蒼一くんのこと愛してる

唇を重ね今日も2人は愛し合う





ごく普通の幸せな家族

そんな幸せが続くと思っていた___

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