児童養護施設に預けられて1週間
慣れてきた蒼依は食事をするようになり声も出すようになった
変わった事は両親からのメッセージカードに書かれた事が出来なく表情を変えることはなかった
1月5日に入った蒼依はお年玉を昨日渡された
家で渡されていた金額よりもはるかに下回る金額に今までどれほど裕福だったのか思い知らされる
施設で渡された財布にお金を入れて管理ノートまで作らされた
職員が居なくなって管理ノートも書き終えたので部屋に戻ろうとすると誰かの肩がぶつかった
相手は中学生の男子3人グループ
大げさにリアクションを取られ蒼依の方を見た
表情一つ変えないのが癪に障ったのか残り2人も蒼依を睨みつけた
前なら幸せな家庭で育ってきて上級生に絡まれたことが無かった蒼依にはどうすれはいいか分からなかったが今はもうそんな考えはない
周りに人はまだ沢山いるのに誰も助けてくれない
心配そうに見つめる人も居れば関係ないと知らないふりをする人
リーダー的な者舌打ちをするといきなり蒼依の財布を奪い中から蒼依のお年玉を全額抜いた
取り返そうと手を伸ばして財布を掴むが男の力と人数で負け2人に後ろに押された
尻餅をついて痛がると ポイっ と何も入ってない財布を投げ捨てられた
中学生が過ぎ去った
手持ち金が0になった蒼依は次のお小遣いまで何も買えなくなった
この日から蒼依は中学生に絡まれるようになり毎日わざとぶつかられ物を投げられる
立派なイジメだった
それでも蒼依は両親を亡くした悲しみよりも全然マシな方と思い何も反応をしなかった
そんなある日の夜
消灯時間が近づいて来てテレビの前からみんなが部屋に戻っていく
まだ消灯時間まであと10分
いつも両親と観ていた番組を真剣に見つめる
またあの中学生がきた
テレビのリモコンを持つと勝手にチャンネルを変えだした
チャンネル変えただけでも蒼依にとってそれはとても悲しい事だった
唯一先程見ていた番組を見ると家族3人仲良く話していた頃を思い出せたから
他の子には来た理由は何があっても職員だけが知っているはずなのにどうしてこの少年が知っているのか蒼依は疑問を抱いた
次の言葉に蒼依は頭の何かが切れる__
気づいた時リーダー的少年の額と鼻からは少量の血が流れた
蒼依がリモコンを奪い中学生の顔をめがけて思い切り投げたのだ
それが合図だったのか今までされたことの我慢が爆発し身近な物をどんどん中学生に向けて投げていく
うさぎの置物や冷暖房のリモコン、筆箱など
蒼依の胸ぐらと髪を掴んだ
それに負けじと蒼依も髪の毛を掴んで足で脛を蹴った
あまりの大きな音に職員が2人様子を見に来た
喧嘩をしているとわかるとすぐに2人を離しもう1人の職員は怪我をした中学生の手当をした
蒼依を引き離した時職員は驚いた
児童養護施設に来てから表情1つ変えなかった蒼依が声を我慢して泣いていた
物を投げるときから泣いていたのだ
残り2人の中学生に向けて問う職員
先に仕掛けてきたのは中学生の筈が一方的に蒼依が悪いように言われる
言い返そうとすると近くにいた中学生に足を踏まれ言葉を詰まらせた
返事をしてしまった時から蒼依は職員や他の子どもたちに 問題児 と認識された
本当の問題児は中学生だがこれが世の中と思い知らされた蒼依
また違う日蒼依は他の子どもたちにも物を投げていた
違う子どもが蒼依と友達になりたく話し掛けてきた時近くにあったぬいぐるみを投げ身体に当てた
それにはちゃんとした理由がある
問題児認識された自分といるとこの子まで目をつけられると考えた蒼依は最初から突き放したのだ
泣いている子を見て胸が痛む
蒼依は怒られあの日の中学生は味方にされる
それもそうだ
職員の前では礼儀正しい優しい中学生に戻るから
児童養護施設に住んでも学校は変わらず行っている
中学生に盗られたとは言えず適当に理由をつける
蒼依の幸せはいつ戻るのか___
✄ - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - ✄
この物語はフィクションです。
登場する個人名などはすべて架空のものですが、児童養護施設は主人公の表現を心がけています。
実際の児童養護施設での現状はこのようなものかといわれると応えづらいです。
あくまでフィクションとしてお楽しみくださいm( _ _ )m
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。