手桶とひしゃく、それに花まで彰都くんが持ってくれている
私は線香やライターが入った袋だけ
お墓までの道は人が少ないから花を持ってもあまり目立たない
そして歩いて15分あるくとお墓についた
駐車場には車が1台もない
それもそうだ、クリスマスイブにお墓参りに来るなんて私くらい
水道があってそこで手桶に水を入れていくことに
蛇口を捻ると水が勢い良く出てきた
すぐに満たんになって持っていこうとすると無言で彰都くんが持ってくれた
水も入れ終わってお母さんたちのお墓の前についた
『泡宮家之墓』そう書かれている
既に飾っているお花を取り出して中のお水を取り替える
彰都くんも手伝ってくれて20分もすると一通り終わった
お線香をまだ上げてなく今からだ
1本から3本と本数を決めて上げる人もいるけど私は1束あげている
今年も同じでお線香を決められた場所に置こうとすると彰都くんに名前を呼ばれた
いつものようにライターでお線香に火を香炉に置くと彰都くんも1本を香炉に置いた
手を合わせてお互い目を閉じる
その瞬間いつも思い出す
楽しかったあの時間
お父さんと一緒に食べたお菓子にお母さんに褒められた日
あの日私が迎えに行こう何て言わなかったらきっと両親は生きていただろう
今でも後悔する
前に進まなきゃ
三橋家は正直言ってあまり好きじゃない、小学生の頃は部屋でたくさん泣いたし眠れなかった日もある、ご飯を食べない日も
それでも中学生になって変わった、凛佳と幼馴染くんが変えてくれた
ねぇお母さん、お父さん、凛佳は優しくて料理上手で私のために泣いてくれた日もあった自慢の親友でお母さんに似てる
幼馴染くんは凛佳大好きで何だかんだ心配してくれてる
それと___
目を開けて隣を見ると先に終わっていた彼が私を見た
そう言うと本人も気づいてなかった涙を拭ってくれた
ん?
恥ずかしいこと?
本人は1呼吸すると私と目を合わせたあとお墓に目を向けた
……ええええ?!
ま、まさかの挨拶?!
え、ちょ、この子育ち良すぎる!!
礼儀正しい…!
…そんなの、私だっていつも助けてくれるのは彰都くんだ
拭ってくれた涙がまた出そうになる
それでも我慢してわたしもお父さんとお母さんに向かって言葉を発した
もう会えなくても話せなくても私の中ではまだ存在し続ける
言いたい事を言い終わって彰都くんと目が合う
かと思いきや下を向いて手で顔を隠してる
さっきまで堂々と言ってたのに今はこうやって顔を赤くしている
ギャップ萌えだ。うん。
幼馴染くんは凛佳大好きで何だかんだ心配してくれてる、それと___
大好きな、彰都くんがいる___
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。