トイレから戻ってきた弘也が言った
絡まれてるって…!
黒木先輩が走って廊下に出ていったのを後についていった
弘也何で助けねぇんだよ!!
人混みの中を掻き分けて更衣室に向かうと廊下で仮装をしている2人を見つけた
男3人組に囲まれていて手首を掴まれている
手を伸ばして助けようとしたその時__
次の瞬間蒼依先輩が大学生くらいの人の股間を思い切り膝で蹴っていた
……うそだろ……
男たちはその場にへたり込みうずくまっている
え、走って助けようとしてきた俺達の立場は……?
か弱いと思っていた蒼依先輩はそれほどか弱くなかった
周りの人がヒソヒソと話している
気のせいか周りの何人かは自分の股間を手で覆わせて守っている
何ともシュールな光景だ
ちなみに俺も同じ男としてあそこを蹴られた痛みには少し同情をした
そして俺は心の中で誓った
〝蒼依先輩を怒らせないようにしよう__〟 と。
男たちが立ち上がろうとしてきた
や、やばいこれ本格的に起き上がったら今以上の騒ぎになる
先輩に近づいて手首を掴んだ
高幡先輩は黒木先輩に任せて俺と蒼依先輩は思い切り足を動かし走った
後ろから男の声が聞こえたがそれを無視して階段を下り渡り廊下を走る
全速で走って体育館の2階の観覧席に行った
ここはどのクラスも出し物に使っていないから生徒と先生しか入れない
床に座って身を隠す
俺以上に息切れをして呼吸を整わせている蒼依先輩
さっきまでの勢いが嘘かのようにか弱く見える
5分もすると正常に呼吸に戻ってきた
少し恥ずかしそうにしている
恥ずかしそうにしたあと俺の顔を見るとぎこちなく笑った
ああ!と納得をする蒼依先輩
少し考えて、
ま、慣れてるよな
あ、その驚いて顔を赤くしているの可愛い
驚くだろうな、なんたって今俺は蒼依先輩に顔を近づけている
床に座りながらも器用に後ろに下がる蒼依先輩
下がりきって壁と背中がくっついた
俺と壁に挟まれている先輩
騒がしい1階
騒がしい心臓
華奢な腕に可愛らしい声
赤くなって頭の中俺でいっぱいにさせたい
先生の声がしてお互いの口を手で覆った
あれ、もしかしてここ今日は入っちゃいけない所?
しばらくして先生は1階へおりていった
っぶねぇ……
同じく危ない……という顔をしている先輩
俺に追い詰められてからまだ頭の整理がついてないのか下を向いている
余裕が無くなっている姿も可愛いと思ってしまう
……あ。この顔いるんだ
今そいつの事思い出して赤くしてんの?
先輩は少しすると小さく首を縦に振った
俺は咄嗟になぜかその華奢な腕を引いて蒼依先輩を抱きしめた
……俺の事好きになってよ、先輩___
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!