PK戦が始まって1番目は3年生の先輩
キックを行う人だけがゴール前に立ってゴールキーパーと1対1になる
彰都くんたちは後ろで待機している
ボールを足元に置いて助走をするために後ろに下がって少しの間止まっていると助走を始めた
ボールに向かって走り右足を上げてボールに当てるとその衝撃でボールはゴールに向かっていく
それはゴールキーパーの手ギリギリを通り見事に決まった
先輩と後ろに待機している人たちはガッツポーズをする
私もホッとしたがそれもまた緊張に戻った
次は相手のキックだ
あと1回ゴールを決めれば彰都くんたちの勝ちになる
次は誰だろうと見るとまさかの彰都くんだった
責任重大で緊張してるはず
私はただ見てることしか出来ない
両手を握ると気のせいか彰都くんと目が合ったような気がする
凛佳も幼馴染くんもそれを感じたようだったので私の勘違いでは無いらしい
練習試合でこの緊張感なら本番はどれだけ緊張するだろうか
彰都くんがボールを安定させ1番目だった先輩と同じように助走をするために後ろに下がった
私は大きく空気を吸い込み両手を口元に持っていき、
その言葉に反応した気がした
練習試合が終わって午後5時
その場で解散となりサッカーの顧問の先生や片付けが終わると彰都くんが私達の元に帰ってきた
約束してないのにこうして4人で帰れる事って何て幸せな事なんだろう
ここに弘也くんが居れば完璧だ
幼馴染くんにお祝いされたあと私の顔を見た
あまり大声を出さない私にとっては珍しく大きな声で彰都くんを応援した
大声を出したことではなくしっかり聞こえてた事に少し恥ずかしさを覚えた
応援だから聞こえてもいいんだけどさ…
何て見苦しい言い訳をしてみるも彼は笑っている
調子くるう…
凛佳に声をかけられ私達は駅に向かった
彰都くんが私の隣に並んで凛佳と幼馴染くんが前にいるときふと思った
もし、もしもだよ?可能性はわからないよ?
もし、彰都くんと付き合えてダブルデートするならこんな感じなのかな
ユニフォーム姿で肩からはエナメルバッグをぶら下げて大きくてごつごつした手
私が彼女だったら今すぐにでも抱きしめてるだろう
-彰都side-
帰りはみんなと電車で帰ることになって電車に乗ると運良く席が空いていた
そして動き出して5分後すぐに蒼依先輩が寝てしまった
元気だけが取り柄な俺
どんだけ動いても疲れて寝る事はほとんどない
夜になると自然と眠くなる程度
向かいに座っている高幡先輩に軽く頭を下げる
不思議に思う
少し前まではこの人が好きだったのに今こうして笑顔を見せられても何とも思わない
それは多分高幡先輩より大事な人を見つけたから
20分もすると高幡先輩や黒木先輩も寝ていた
俺だけ起きている状態になって残り10分携帯でも弄ろうとエナメルバッグから出そうとしたがそれは阻まれた
左肩に重みを感じたから
蒼依先輩が俺の肩に寄りかかってきた
落ち着け俺、相手は寝てるだけだ
……シャンプーの良い香りがする
て、俺変態かよ
左肩が熱い
起こしたかなと焦ったが気持ちよくまだ寝ている
体のあらゆる所の脈が打った感覚
特に心臓が1番脈打つ
寝言で自分の名前を呼ばれることがどれだけ照れるか今実感した
しかも好きな人に
俺が呼んでも寝ている
蒼依先輩の髪に軽く自分の唇を重ねた
髪にキスをすると言う何とも恥かしい事は初めてだししたいと思ったのも初めて
蒼依先輩が誰を好きでも良い、そんなのもう関係ない
貴方の心の中に俺じゃない男(ヒト)がいても振り向かせる
それくらいの覚悟で明日からアピールしますね__
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。