第2話

心は必ず自身と共に。
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2017/10/18 10:58
───── 昼の事 。
何時もの様にベッドの上、窓の空を見つめ続ける 。

空、自然、動物達だけは___何年も変わらない姿。でも人間達は日に日に変わっていく 、今はもう…人がはたらく姿等、良く良く珍しいものと化しているのだ 。


すると、目の前の" 健康診断チェックモニター "と呼ばれる、一見普通のモニターだが姿や心、脳内、体調面を見透かし毎日チェックする高性能なモニターの電源が入った。

「コンニチワ。オ昼ゴ飯ノ時間デス。今日モ心ノ状態、体調等ヲ チェック サセテイタダキマス。」

モニターに写ったのは医療型人間モデルのナース ミーナさん。
俺の治療手助けをしてくれる担当の方である。

モニターには[心検査中…][体調検査中…]と写しでる 。

「ミーナさん、こんにちわ 。今日の天気はずっと晴れなんですか…?」

「エェ。今日ノ天気ハ一日中晴レデス。明日ノ天気ハやや曇リ トノ事デス。」


そんな何気無い会話をしていると、モニターに[結果]と健康診断が終わった合図が映され___

「今日ハ変ワラズ健康的ナ心、身体、デス。今日モ一日健康デイマショウ。」

その一言でモニターはプツンッと切れ明るいモニターが一瞬の内に悲しい真っ暗に。

「今日も健康…もう、退院しちゃ駄目なのかよ。」

健康な人が病院に居て何になる。
そう思ったが、同時に仕方が無いという言葉も脳内に現れる。

俺の病気は何時、現れるか 症状が出るかが不明の病だから__簡単には此" 病院 "という世界から出ることは許されないのだろう。

ベッドから立ち上がり、健康な日は近くの食堂に行っても良い事が認められる為" 健康 "と映し出されている腕輪を嵌めて食堂へと向かおう、とした時

目の前のドアが、開けようとした同時に開いた────。

目の前に居たのは、先程の少女
" 697 "

「ぁ、!__また脱走でもしたのかよ?」

と真っ白な人間モデルの少女に問い掛ける。脱走したのにも関わらず、無表情で只只俺の瞳を真っ直ぐ見詰める。

「___脱走した。貴方の名前を教えてもらう為に。」

驚いた。
彼女は感情が無い事に自ら自覚を持っているのにも関わらず、何故か" 感情 'の様な人間らしい事を言い出す。

彼女達、人間モデルからしたら人間の名前なんてどうでもいいのに___


「ぁ、え…と…お、俺の名前は慎也。」

彼女の言葉に驚き続ける俺は、言葉詰まりながらも自身の名前を彼女に告げる。

「しんャ…しんや…慎也。分かった、ちゃんと覚えた。」

彼女は慣れない言葉に少々カタコトになりながらも、ちゃんと俺の名前を覚えてくれた。何故だろう___覚えてもらっただけで、こんなにも" 嬉しいだなんて "生まれて初めてだ 。

「慎也、は…今から何処に?」

彼女は首を傾げて俺に問い掛ける。

「食堂。今日は健康診断で、健康って出たから食堂の立ち入りがOKされたんだ」

俺は腕に嵌められている健康のマークを見せる。その下には担当ナース ミーナと担当さんの名前が書かれ。

「__ミーナさんだ…」

同じ、人間モデルの為彼女は面識がある様に腕輪を見続ける。

「あれ、ミーナさんとお知り合い?」

「とても先輩の方。」

人間モデルにも、上下関係というものがある事を知る一つの言葉だった。
学校でいう、先輩と後輩
会社でいう、上司と部下的な_。

「先輩…人間モデルの世界にも上下関係ってあるんだ…」

「ある。私は医療型でまだ正式に何かはまだ分からないモデル。ミーナさんは医療型の正式に一番上といわれる助手専門だから__ベテランさん」

初めて知った。
何時も、検査や症状が現れた時、不健康の時食事を運んでくれる彼女が人間モデルの中でも上の方だという事に。

「君は__何処の専門になるか、とかもまだなのか…?」

俺は聞いてみる。
もし、彼女が助手専門になるのなら" 俺が退院する時まで脱走何かせずに堂々とお話が出来るから "
もし、彼女が臓器移植専門になるのなら" 何時話せなくなるのか分からないから "

「───それは、上層部が決める事。私に決める権利等無い。」

彼女はキッパリと冷たい言葉で伝える。当たり前だ、ロボット系漫画やアニメ等で良く言われている言葉「ロボットに決める権利等ない」それは現実にも起こりうる話なのだ。

例え、感情が彼女らに芽生えたとしても許されない___


「そっ、か…て話してると腹減った…飯食いに行くけど…697は脱走してんだから、無理だろ?」

「平気。こうすればいい。」

彼女は、胸元を人差し指でボタンを押すかの様に押すと、一瞬の内に姿モデルが真っ白な服から病人と同じ服装かつ顔が良く良く覗かないと見れない服装になっている。

「こ、こんな事も出来るんだ…すげぇ…」

俺は改めて人間モデルの凄さに気づく。何もかも一瞬の内に行動出来る事が

「行こう。慎也、私には食堂と言われる場所の位置が理解出来てない_この機会に教えて欲しい。」

彼女は、勉強熱心な所もある様だ。
理解出来無い場所があれば俺に聞いてくる、何だか珍しいモデルだ。

俺は、彼女の真っ白な小さい手を握る。暖かくも無く、人間に近い手だが何処か違和感を覚えるその手をぎゅっと

「──?之は?之は、何?」

背の低い彼女は、上を見上げて俺に問い掛ける。
俺は、微笑み乍彼女にちゃんと悩み、考えながらも 問い掛けに答え。

「之は_その、大切な人を守りたい、というか…何だろう…相手も自分も両方の心を一瞬の内に暖かくさせる行動…ってもんかな…?」

「───暖かく…でも、生きる意味を知らない私に心など…無い。」

彼女は、自分の胸元を抑えながら下を俯き上下を段々小声になりつつも口に出す。

「いいや、この世に生まれた者達、例えロボットでも花でも木でも空気でも…何でも心は持っている。697はまだ自身の心に気づけていないだけさ…此から見つけて行こうよ」

悲しげな表情をする彼女の頭を、無意識に撫でては優しく、笑顔を見せる。
彼女は忽ち俯いていた顔を上にあげ

「慎也の言葉を聞いたら…何だか暖かくなった。不思議な体験をした__」

その言葉に、俺は一瞬の内に不思議な体験が「心の温かさ」だという事に理解する。彼女はちゃんと、心を持っている___俺は決意する、彼女が心に気付いてくれるその日まで…彼女の教師の様な素敵な立場になる、と。

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