第3話

女王様
36
2017/10/15 05:39

小鳥遊。
たかなし。
タカナシ。

.....小鳥遊祐也。

移動教室の授業からずっとそいつの事ばかり考えてしまっている。
仕方ないだろー、久しぶりに話した相手なんだから。
そしてついには放課後になってしまった。
まだすこしふわふわする足元に注意して帰ろうと鞄を持つ。
女子3
ねぇ、川瀬さん。
あなた暇でしょ?これやっていってよ。
どさどさっと、机に置かれたプリント。
数学のプリント。
あなた

な、なんで...

江原 尚子
江原 尚子
やってくれるわよね?
川瀬さん優しいもの。それに...
私達暇じゃないの
あ、これは逆らったらまずい奴だ。
腕を組み見下すように笑うのはこのクラスの女王様、江原尚子。
顔しか取り柄のない性格ブスめ。
江原 尚子
江原 尚子
ありがとう。それじゃあお願いね。
...ふふ、誰かに言ったらどうなるかわかるわね?あぁ、流石のあなたもそこまで馬鹿じゃないわよねぇ
くすくすと笑いながら江原と女子は教室を出ていった。
はぁ...言い返すこともできないとは情けない。でも逆らったら本当に虐められるだろうから言えない。第一江原が前にいじめた奴は学校をやめた。

僕は大人しく椅子に座るとホチキスでプリントをまとめていく。
細々と作業を続けていると、
フフ、可哀想ナ子
机に白い手が現れた。
頭上でひやりと冷たい声がする。
私は気付かないふりをして作業を続ける。
可愛クテ可哀想。
コッチ二来テ遊ビマショウヨ
うるさい。
僕は可哀想なんかじゃない。
ひたすら声を無視してプリントをまとめる作業を続ける。

気がつけば白い手も消えて声も聞こえなくなっていた。
僕はまとめ終えたプリントを職員室に持っていくため鞄を持って教室を出た。
夕暮れ時。
オレンジが廊下に差し込んでいた。
逢魔が時が近づいている。奴らが出やすくなる時間の前に早く家に帰らなければ。

僕は、
僕は、

可哀想なんかじゃ、ない。

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