なんとか逢魔が時前に家についた。
もちろん家の中には誰もいない。親は共働きでめったに帰ってこない。油断していたらリビングにまでそれは入ってくる。外より量は少ないけど。
自分の部屋に入ろうとドアに手をかけた瞬間フッと視界が黒に染まった。
女性の声でも男性の声でもない。
両方の声が混ざりあった非常に不快な声。
僕が黙っているとそれは続けた。
その言葉は心に突き刺さる。
当たり前の事実なのに辛くてしかたない。
くすくす、あはは、それは笑う。
僕が応えないでいると視界は急に明るくなった。もちろん、何も無い。誰もいない。
僕は自分の部屋に入った。
頬が濡れているのに気づいて触る。
泣いていた。
僕は泣いていた。
先程の声が頭から離れない。
明日僕の世界が終わるとして、本当に悲しんでくれる人はいないのだろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。