僕の名前は撫子祐樹(なでしこ ゆうき)。
17歳のちょっとヘタレな男子高校生である。
撫子という苗字や、もともと女顔のせいもあり、
よく女々しいとバカにされている。
それがコンプレックスだった。
しかし僕だって男だ。やるときはやる。
そんなことで、明日。
僕はずっと前から好きだった笹原こまりさんに告白をするつもりだ。
連絡だってしてある。
「明日の放課後体育館裏にきてください、
話したいことがあります。」と。
僕の想いを伝えるためにも、身だしなみはきちんと整えなければならない。
だから、切らしてしまったコンタクトを買いに現在
眼科にいるんだけど‥‥。
マスクをつけた胡散臭そうなお姉さんに、
痛くもかゆくもない左目を指さされながら告げられた。
僕の言ってることも聞かず、(ヤブ)医者から
受け取った眼帯は、想像しているものとは別のものだった。
怪しすぎる。
なんだこの医者。
言ってることがめちゃくちゃだ。
突然ボソッと言われた低音の声に僕はビビり、
「すみません僕が間違ってました。持って帰ります。」と言って、眼科を後にした。
医者は「 絶対着けてね♡ 」と先ほどの発言をしたとは思えない素敵な笑顔で見送ってくれた。
いよいよ、明日告白するというのに。
なんて日だ。
もらった黒い眼帯を握りしめて、ため息をつく。
しかし僕の最悪な日は、はじまったばかりだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!