第3話

事件
761
2017/10/22 17:15
スキャター
マ、マルフィさん!
ちょっとどういう事ですかっ
マルフィ
何の用だ?スキャター。
彼は鏡に写った自分から目を離さないまま、私が怒っている理由など知らない様な口ぶりで話している。
スキャター
何って、リクルーティングでのあの行動についてですよ!
マルフィ
あの行動とは?
ちゃんと言葉にしないと分からないじゃないか。
スキャター
だーかーらー!
そこで私は口ごもる。
自分がされたことを改めて口に出すなんて恥ずかしい。
そんな様子を見て彼は面白がっている。
スキャター
っマルフィさんが...
私のことを抱きしめた...事についてです...
そこまで言ったところで、私の中で何かが弾けた。
スキャター
なんであんなことしたんですか!
ゲストに誤解されたかもしれませんよ!
マルフィ
well,well.そんなに顔をふくらませたら、元々美しくない君の顔が見るに耐えないものになってしまうよ...
それに私は、君を抱きしめたくなったから抱きしめたんだ。
人間のメスも嬉しそうに叫んでいただろう?
喜んでくれたならそれでいいんじゃないか?
私と君の'イチャつき'目当てで見に来る人が増えれば優秀な人材も見つかりやすくなる。プラスしかないだろう?
プラスしかない?いやいや、あんなのを何回もやられたら嫌でも意識しちゃうって...
って、そうじゃなくて!
スキャター
何ですかそれ、やられる私の身にもなって下さいよ!
マルフィ
ヴィランズならそんなのもお手の物だよ?
そんなに嫌なら、君が私に惚れてしまう魔法を掛けてあげようか?
スキャター
あーなるほど、それはいい考え...って惚れ!?惚れされるってめちゃくちゃイケメンが言いそうなセリフだけど、いや、惚れって!
マルフィ
そんなに慌ててどうしたんだ?
マルフィさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
嫌な予感がする。

それは的中し、間もなく私を抱きしめた。
リクルーティングの時よりも、強く、長かった。
マルフィ
リクルーティングの時もこの位してあげてもいいのだが、生憎時間がないんだ。
君も分かるだろう?
あの音楽に合わせて動かないといけないんだ。ミスターから言われているものだからね。
スキャター
マルフィさん...
マルフィさんなんて嫌いです!
マルフィ
スキャター、顔が真っ赤だよ?正直に言ってごらん。
スキャター
ほんとに嫌いですよ...
好きでもない女の子にそんなことするなんて、お嫁さんになる人が可哀想です!
彼からは返事がなかった。恥ずかしくて俯いたまま上を見れないが、おそらく私の事なんて気にもとめず鏡を見ているのだろう。
失礼します、そう呟いて自室に戻ろうとした。
マルフィ
スキャター。私は恋心を抱いている人以外に、思わせぶりな態度を取ったりするような酷い男ではない。
スキャター
で、でも私にしてるじゃないですか。
マルフィ
君はそんなだからヴィランズになれないんだよ。
そう言うと、マルフィさんは私を抱き寄せ、そしてキスをした。
マルフィ
まだ分からないのか?私は君が好きなんだよ。
スキャター
〜っ!
先程とは違う、ヴィランズらしからぬ優しい笑みを向けられ、私は退くことも、その言葉に応えることもできなかった。
私がヴィランズになる日はまだ遠そうだ。

プリ小説オーディオドラマ