結婚式が始まった。
シンデレラが彼の元へ少し、また少しと近づいていく。
涙は堪えよう。
この2人の結婚はおめでたい事だ。
私が泣いてしまっては台無しにしてしまう。
式は進み涙腺の脆い私は少し泣いてしまった。
私はまたあの時のように1人でに泣くジュリエットだ。
結婚式を見ているとまた彼との過去の思い出が頭の中でよぎっていた。
私のあなたでなきゃこの物語の幕は下ろせない...。
ずっとそう思い続けてきたがもう認めなければならない。
分からなければならない。
式ももうそろそろ終盤に差しかかっていた。
2人はとても幸せそうだ。
私は幸せそうな2人の邪魔をしてしまいそうで怖かった。
もう私の心には心残りなんてものは存在していなかった。
やはり彼とシンデレラの結婚を見送る事が出来たのか私は少し自分の気持ちに収まりがついた。
彼には何もあいさつをせず私は心の中で彼に伝えた。
【これで何もかもおしまい...。】
【悲劇はあなたとシンデレラにあげるわ...。】
【さようなら...。私のロミオ...。】
私は式場から少し離れた所で泣いていた。
そんな時に1人の男が現れた。
その男は結婚式の時私の隣に居た。
すなわちシンデレラの友人代表なのだろう。
その男の瞳にも涙が浮かんでいた。
だが私にハンカチを渡してくれた。
私と彼は笑い合っていた。
初対面なのにどこか似ているようだった。
彼もシンデレラのことが好きだったようだ。
だが私と同じように気持ちが伝えられずにこの日を迎えたのだろう。
私と彼は似たもの同士だ。
似たもの同士だから分かり合えた。
私はこの時からだろう。
この人のことが少し気になる存在になっていた。
私の新しい人生が一歩、踏み出し始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!