話を戻すがメアリースーは原作のキャラクターを上回る活躍をしたり、誰からも愛されたりと言った年頃のガキなら涎を垂らして喜びそうな設定の塊だ。
しかしこれらの設定と言うのは元々あったバランスやキャラクターの関係性などにさえ大きな影響を及ぼしかねない。
例えばまたラプンツェルを例に話すとして、
ラプンツェルの主人公=王子
としておき
ヒロイン=ラプンツェル
と置く。
そしてここに第2のヒロイン=メアリースー
とする。
そして設定はそうだな……
(色んなものを割愛して話を作るとしたら)
王子はある日、ラプンツェルと同じように塔に幽閉されている少女と出会います。
森に隠されるようにして建てられたその塔に少女におり、メアリースーという名前でした。
ラプンツェルとは比べ物にならないほど美しい歌声と見た目を持つメアリースーに、あろう事か王子は恋心を抱いてしまいます。
そして王子の心は揺れます。
自分の子を身ごもったラプンツェルと、この美しいメアリー。
どちらを取るか、普通であればまあラプンツェルのはずです。
しかし王子は決められないまま二人との密会を繰り返していました。
そして悲劇は起こります。
王子は薔薇の棘が両目に刺さり視力を失ってしまったのです。
森をさまよう王子。望むのは、彼女たちのどちらかとの再会。
願いに願いを重ねながら木の実や果物を食べる毎日の中、奇跡は起こりました。
いつかに聴いたあの美しい歌声が、微かに聞こえてくるではありませんか。
王子は無我夢中で走ります。その時にはラプンツェルの事など頭にはありません。
そして二人は出会えました。
倒れ込む王子を優しく包み込んだメアリーはその痛々しい有り様に驚き、そして涙を流します。
奇跡はまだ続きました。王子の目は光を取り戻したのです。
王子とメアリーは結ばれ、城で仲良く暮らしました。
元々くっつく相手はいるけど、私はこの子と結ばれたい。
元々いるヒロインが嫌いだし私はこの子が好きだから消す。
そういう気持ちが本来のヒロインの恋路を邪魔する方向に動く。
メアリースーとは「思春期の子供の理想」
であると同時にこうなりたいという願望の「自己投影」から出来るキャラクターだ。
作られたメアリースーは自らの意志に関係なく寝取りキャラにされたり、
作者の嫉妬心や否定したい気持ちからなる改悪によって改造された原作キャラクターにいじめられたりする理不尽なキャラクターでもある。
このキャラクターはこんな設定(うんめい)で果たして本当に幸せなのか。
どれだけ不幸な星の巡りに位置するキャラクターであってもどこかで幸せだと思える要素がある。
誰もに愛されることは幸せなのか?
男性と変わらない運動神経だからといって混ざって激しいスポーツをすることは有りなのか?
考えてほしいことはたくさんあるが、そこは皆さんに考えてもらおう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。