お母さんがもう寝なさい、というまで友哉と私はずっと話していて22時を過ぎていることに全く気づかなかった。
もう終わりそうな雰囲気になったのでちょっと待ってて、と友哉に声をかけて私は飲み物を持ってきた。
言い出しっぺの責任はあるしな。と付け加えて友哉は私に背を向けた。
私の呟くような小さな声が聞こえたのか、可愛げのない返事を残して友哉は帰っていった。
私は前野くんと唯一同じ趣味のT4のCDを流しながら、勉強机に向かって優栗に渡す手紙について考えていた。
……拝啓優栗様?
堅苦しいか。
優栗ちゃんへ、とか??
なんかうざいな。
はぁ、最初の出だしさえ決まらない。
もうダメだ。頭の整理がついてから考えよう。
そう思ったので私はベッドに入り、目を瞑った。
そしていつも通りの朝がやって来た
と言いたいところだけど、なぜか普段と比べて頭が重くてフラフラする。
まだ初夏なのに風邪かな、と思いながらリビングへ降りていくと
「今日は2人とも早番なので先に言ってます。ちゃんとご飯食べてね。」
というメモがテーブルに置いてある。
あぁ、運がない。
体がだるくて、格好がつかないが壁にあらだを預けながら呟いた。
風邪薬どこかなと探しているといきなり視界がシャットダウンされ、思わず棚に捕まってしまった。
学校に行こうと思ったけれどここまであからさまに悪いと流石にまずいと思ったので、薬を見つけるのは一度中断していつも休みの連絡を書いてもらっている友哉のお母さんに連絡を取ろうと、スマホを操作して「友哉」という表示をタップした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。