とうとう受験日だ。
筆箱に付いたお守りを強く握る。
このお守りは健ちゃんが作ってくれた。
それは小4のころだ。
その頃私は勉強が苦手になりつつあった。
これがあるから私は頑張れた。
ポストを見るのが私の係。
珍しく私宛だ。切手もないし住所もない。
とりあえず読んでみる。
「山本あなた様
もうたくさん雪が降って寒いですね。
本日は受験日。窓からあなたの勉強してる姿がよく見えます。
努力は必ず報われる、僕はそう思ってます。
あなたが小4の頃(覚えてないとは思いますが)それに似たような言葉を言いました。
あなたを見て報われるのは本当だと確信しました。
高校には絶対行ってください。
僕は色々あって中退したので憧れがものすごくあります。
後悔しない受験をしてきてください。
春、笑顔で入学するあなたを心待ちにしております。
三宅健」
健ちゃん…。
こんなに長々と私に書いてくれてありがとう。
新たにお守り増えそう。
(健ちゃん中退したのに金持ち…凄いな)
そして。
カチカチカチカチ…。
私は健ちゃんの言葉を胸に鉛筆を動かす。
1分1秒も無駄にしないように。
そして後悔しないように。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!