それから3週間後。
「ケガも順調に治っていますね。
学校に行くのもいいでしょう。」
「どうするの?」
母が尋ねた。
私はしばらく悩んだが、行くことにした。
「おはよう!」
小鳥が朝日に照らされながらさえずる朝。
すべてが変わってしまったようで、何も変わらない朝。
それなのに、私の胸はどきどきしている。
学校の門をくぐり抜け静かに教室へ向かう。
不思議そうにこっちを見る人。
心配そうにこっちを見る人。
嬉しそうにこっちを見る人。
「おはよっ」
「えっ!」
少し驚いて振り返ると
話しかけてきたのは、幼馴染で隣の席の中川涼介だった。
「びっくりするじゃん!」
少し怒りながら呟いた。
「ごめんごめん。里奈、元気なかったから。」
うれしかった。すごく。うれしかった。
ずっとひとりぼっちのような気がしてた。
それなのに、
そんな気持ちを一瞬にして
どこか遠くに吹き飛ばしてしまったようだった。
いつも涼介は強引だ。
相手の気持ちなんか考えずに約束するし。
でも、そんなこと1時間目の授業の時には
すっかり忘れていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。