恋バナに一切参加していない私は珍しく真面目に先生の話を聞いていた。
が、面白そうな話題が舞い込んできた瞬間に、私の脳はそっちの話に占領された。
ちらっと中島さんのほうを向いてみた。
私の視界に入ってきたのは
中島さんじゃない。
なぜだか知らないけど
静かに黒板を眺める 彼 だった。
今までは頬ずえをついていたが、私の目線に気づいた 彼 は少し驚いたふうに体を真っ直ぐにして、こっちに軽く会釈をした。
私もそれにつられるように頭を下げた。
なんとなく机に向き直って、目に映り込んできた 彼 のことを考えた。
優しそうな目をした、小さい男子だった。
挙動不審なその態度が、私に興味を持たせた。
人の名前を覚えるなんてそんな器用なことできない私は、メモ帳にひたすら情報を書き込もうとした。だが、男子の中盤あたりになると気力が足りなくなって、ペンの進みが遅くなっていった。
もういいか、今度覚えよう。
ああでも、さっきの 彼 の名前は、一応覚えておきたいな。
そう思った。
思ったとき
名前
そう、さっき聞いた名前。
中島さんの好きな人。
ペンを静かに置いて、教卓のほうを向いてみた。
そこに立っていたのは...
ああ、そうか、
君が高城 光か。
『彼』は静かに、そう、本当に、葉が呼吸するように静かに息を吸って、自己紹介を始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。