なんてお高そうな車…!
黒い車体が輝いててなんか、乗るのに気がひける。
私は助手席にのって、陸人は運転席に乗った。
陸人運転できるんだ…。
私は自動車学校に通う時間がなくて、免許はまだとれていない。
なんか、ズルいな、こんなにカッコいいの。
自分でいうか!?
と、心のなかでつっこんだ。
ってか、本当にサングラスをかけだすじゃん。
カッコいい、なんて素直に言えるわけないじゃん。
けど、そっけなさ過ぎたかな…?
チラッと横目に陸人を見る。
陸人は何でもないと言う風な顔をしていた。
気にして損した!
…。
そういえばこの人ドSだった!
嫌な予感がする。
いや、負けるな自分!
こんなんじゃ、結婚後の自分が心配!
こんなドS男なんかに負けない!
と、勝手に一人熱意を燃やしていると…
おぉー。とはいったものの、どこか分からない。
とりあえず分かることは自分がいる場所はビルの前であることだけ。
陸人に手をひっぱられ中にはいった。
陸人は嬉しそうな俺様の顔でニヤニヤしている。
思ってた罰と違う…
むしろ、嬉しい!!!
俺様のくせに…笑
何でしたの名前?
ていうか、どうぞごゆっくりってどゆこと?
この店員さんではないのかな?
さらに意味が分からない。
確かにずっと陸人の仕事はなんだろうって思ってたけど。
美容師さんでもあるのか…。
何?こいつ。ホントになんでもできるじゃん。
言われるがまま動く。
なるほど、今は本当に店員とお客さんって感じでいくのか。
顔に布を被せた。
美容院で髪の毛洗ってもらうの好きなんだよなー。
これをしてるの、陸人じゃないみたい。
特に会話をすることもなく、髪の毛を洗い終わった。
俺好み…笑
気になったけど、つっこむような気分でもない。後はまかせよう~
あっ、そうだ!
違和感しかない二人の敬語。
なんか、新鮮。
耳にイヤホンをつけて、マスクで目隠しがわりにして、目を閉じる。
あっ、寝れそう笑
どんな風になるのかな~
陸人が私の髪を触っていく。
音楽を聴いているから、髪の毛を切っている音は聞こえない。
早くみたいな。
夢心地のまま、私は眠りへと落ちていった。
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耳元でささやかれて、ゆっくりと目を覚ました。
イヤホンははずされていて、マスクだけつけられていた。
ゆっくりとマスクをとる、と。
最近美容院なんか行ってなかったから、私の髪はすごくのびてた。
いわゆるロングヘアー。
髪の毛も量があって、重たい印象。
それが、なんと…!!
ゆるふわミディアム!
肩よりちょっと長いくらいで、あの多かった髪の毛もすごく軽くなってる。
自分で言うのは自意識過剰かもしれないけど、ちょっと可愛く見える。
これが、陸人の好み、か…。
嬉しい気持ちを押さえられなくて、私は陸人の方を見た。
鏡ごしなんかじゃなくて、ちゃんと実際に。
唇と唇が重なる。
甘くて、優しいキス。
ほんのりと、陸人の顔が赤いような…
まっすぐな瞳で私を見つめる。
ドクドクドクと高鳴る鼓動。
今が一番幸せかもしれない。
そんな風に幸せ気分を満喫していたのに…
可愛い髪型にしてもらったのに、まだどこかいくの??
陸人は私の腕を引っ張り走っていく。
こういう陸人も好きかも
まだ番外編は続きます
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!