プロポーズされてから1週間。
陸人からは連絡なし。
そう思い始める今日この頃。
とはいえ、私も仕事あるし…
私の仕事はパティシエ。
専門学校を出てから、今の職場についた。
みんないい人で、すごくいい環境で仕事させてもらえているの。
パティシエといっても、まだ見習い程度。
基本は接客や掃除、洗い物など。
閉店時間になってから、次の日の仕込みを少しだけ手伝わせてもらってる。
私も仕事忙しいし、陸人も大変なんだろうなぁ。
ブーブーブー
ブーブーブー
乃愛…から?
予定を確認する。
明日、仕事午前11時まで。
そっか、日曜日なんだ。
日曜日はお店の定休日。
だから、午前中だけ、シェフにマンツーマンで作り方とかを教えてもらえるの。
きられた…。
もう、乃愛ってば相変わらずだなぁ。
っていうか、いつ陸人と連絡取ってたんだろう…?
私にはLINEの1つもないくせに…。
ふんっ、陸人のバカ。
だけど、楽しみだなぁ。
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(次の日)
先生とのマンツーマンのレッスン、終わった~!!
もちろん、ありがたいし勉強になる。
だけど、疲れる。
でも今日は…!
今はぴったり11時。
最近お仕事ばっかりで服も買えてなかったし、ちょっとオシャレしていこうかな?
ぐいーっと背伸びをして、歩き出そうとした瞬間…
私の肩に背後から腕をまわされた。
というか、抱きしめられてる…?
普通なら、大声出して逃げるところだけど…
ちょっと日焼けしてて、男らしいほどよい筋肉がついてて、なんだか安心するような優しい感じ。
もしかして…
図星だけれどさ…。
でも本当に可愛くないやつ。
俺様、とか、相変わらず変わってないみたいだし
さらにギュット抱き寄せられた。
陸人が顔を肩に乗せてきた。
今まで陸人がこんな風に甘えて来たことがなくて、正直びっくりした。
だけど…
陸人がそういってくれることが素直にうれしい。
そして何より、この甘い雰囲気にずっと浸っていたい。
そういった瞬間、陸人がガバッと私をひねかえらせ、私の顔の目の前でこういった。
どういう意味…?
高校卒業する頃にはもう、私との結婚を望んでたってこと??
そんなにも想ってくれてたんだ…。
私の頬にあたたかい雫が落ちていく。流れていく。
そして、陸人の胸へと抱き寄せられた。
陸人の温かさが、ぬくもりが、私の体温と同じになる。
陸人をずっと好きで良かった。
私たちは見つめあった。ただただ静かな時間だけが流れていく。そして、顔をよせあい、唇をそっとつけようとした瞬間…
プルルルルル
プルルルルル
なんて、タイミングなの?!
せっかくのいいムードが!
1分くらいで電話をおえ、陸人がこちらを向いた。
がし、っと私の手首をつかむ
でも…
こーやって、昔みたいにしゃべれるの
楽しい
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!