第53話

藤ノ花【番外編】
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2020/06/12 12:00
※吹き出し無し

《柱稽古》


竈門炭治郎 【視点】
特別な訓練が始まりました

その名も"柱稽古"

柱より下の階級の者が 柱を順番に巡り

稽古をつけてもらえるという




まずは宇髄によるしごき 基礎体力の向上から始まり

藤ノ花 あなたによる悪魔の呼吸訓練

甘露寺 蜜璃による地獄の柔軟

時透 無一郎による高速移動の稽古

蛇柱による太刀筋矯正

風柱による無限打ち込み稽古

岩柱による筋肉強化訓練

{お宿 藤の葉}

炭治郎 「ごめん下さーい!」

あなた 「あら、竈門さんではありませんか ニコッ」

炭治郎 「今日からよろしくお願いします!」

あなた 「ふふっ元気で宜しいです。では、始めましょう」


そう言って連れてこられたのは、稽古場

そこには他の隊士がいて、皆あぐらをかいて呼吸の練習をしていた


あなた 「最初に説明をさせていただきます ニコッ」

炭治郎 「はい!」

あなた 「私の所では、呼吸の訓練をします。と言っても、竈門さんは全集中常中を身につけているので、そう長くはかかりません」

あなた 「軽く矯正をして終わりになります」

炭治郎 「わかりました!」


俺も他の隊士に混ざって呼吸の訓練を始めた

ゆっくり息を吸い、吐く

これをする事によって集中力が上がるのだとか

その日のお昼

俺たちは、用意してもらったご飯を食べながら他の隊士とお喋りをしていた


隊士1「はぁ〜疲れたぁ…」

隊士2 「だよなぁ、俺も」

隊士3 「竈門は、凄いよな」

炭治郎 「そんな事はないと思うけど…」

隊士1 「全集中ってあんなに大変なんだな…」

炭治郎 「うーん、確かにそうだけど。できると凄く楽に闘えるぞ!」

隊士2 「俺なんか今日、4回くらい叩かれた…」

炭治郎 「叩く…?」

隊士3 「呼吸が乱れていると、藤ノ花さんに木刀で叩かれるんだよ、俺は2回」

隊士1 「にこにこしてるけど、ちょー痛え」

炭治郎 「へぇ、でも…あなたさんは教え方が上手いし、ここで頑張れば凄く強くなれると思うぞ!」




稽古 三日目


俺がいつも通り呼吸の訓練をしていると、あなたさんに声をかけられた


あなた 「竈門さん、少し此方へ…」

炭治郎 「はい!」


俺は、あなたさんの前で正座をして座った


あなた 「竈門さん。竈門さんは"透き通る世界"をご存知ですか?」

炭治郎 「透き通る…世界?」

あなた 「はい、そうです。これは呼吸の一つ上の段階とでも言いましょうかねえ」


そう言って、あなたさんは俺に“透き通る世界”の事を教えてくれた

一点に集合し、他の感覚を閉じること

体が透き通って見えること

しかし、この呼吸法はとても難しいということ

今思えば、半天狗が心臓に隠れていた時も同じなのではないか

あの一瞬、確かに“見えた”のではないか


炭治郎 「あなたさんは、その世界が見えるんですか?」

あなた 「はい、そうですね」

あなた 「しかし、私も完璧では無い。普段から見える訳ではありません」

あなた 「集中して、初めて見えるのです」

炭治郎 「それ、俺に教えて下さい!」

あなた 「そう言ってくれると思っていましたよ ニコッ」


あなたさんは、少し嬉しそうに笑った

その日から俺は、“透き通る世界”に入れるように呼吸の練習を始めた

しかし…


炭治郎 「はぁ…はぁ…できない…」

あなた 「竈門さん、焦りは禁物です。ゆっくりいきましょう ニコッ」

炭治郎 「は、はい…」


俺は、こんな風に何度あなたさんに諭されたことか…


あなた 「竈門さん、息を吸って下さい」

炭治郎 「スゥーーーー」

あなた 「吐いて下さい」

炭治郎 「ハァーーーー」


く、苦しい…


あなた 「竈門さん…」


あなたさんは、俺の額を人差し指でとんと突いた

すると驚くほど、緊張が解けていく


あなた 「血の巡りを意識して下さい。心臓から押し出され、脳、手、足…その一連の流れを感じるのですよ」


俺は、自分の身体に意識を集合させ、“血の巡り”を感じる

とくん…とくん…

すると、身体を流れる血の繋がり、巡りが分かってきた


あなた 「さぁ、目をゆっくり開けてください。何が見えますか」


俺は、言われた通りに目をゆっくりと開ける


炭治郎 「…!?」

あなた 「見えたようですね ニコッ」

あなた 「ようこそ“透き通る世界”へ。この感覚を覚えて置くように」

炭治郎 「…凄い」


ただその一言に尽きた

あなたさんや俺の身体が透けて見えた

臓器や、神経の一本一本が“見えた”


あなた 「竈門さん、次の柱の所に行くことを許可します」


そう言うと、あなたさんは少し哀しそうに笑った


炭治郎 「ありがとうございました」


俺が見えた“透き通る世界”は、一瞬で終わってしまったが、これから長く続けられるように努力しよう

俺は、次の日、あなたさんの所を後にした

あの哀しそうな笑みが心に引っかかったが、俺は知らない振りをした
【番外編】    ~完~

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