第17話

夜空
162
2017/10/29 09:11
夜は近くのホテルにお泊まり。
私はもちろん、愛たちと同じ部屋。

今は深夜の3時です。
なぜこんな時間に起きているのかというと、
ただ、眠れないからです。
愛たちはぐーすか寝ている。
消灯時間だし、先生も寝ているだろう。
高橋 千晃
(少し、夜風にでもあたってこようかな)
深夜だから、誰もいない。
空を見ると、銀色に煌めく月が見えた。
夜なのか、朝なのか、判断つかない空。

自販機ないかなーと、
周りをキョロキョロしていると…
少し遠くから歩いてくる人影が見えた。
高橋 千晃
…ひなくん
息を飲む。
部屋着なのか、全身ジャージ姿。
制服しか見たことがないから、
いつもと違う、私服姿のひなくんにドキドキする。
高橋 千晃
こ、こんばんは!!
思いきって話しかけてみた
高杉 日向
…何してるの、こんな夜中に
高橋 千晃
そっちこそ。
何してるのさ
高杉 日向
…眠れないんだ
高橋 千晃
あ!それ、私も!!
眠れないよねぇ♪
高杉 日向
……
ひなくんは少し怪訝そうな表情を浮かべた
高橋 千晃
あっ…今、お前と一緒にするな! とか思ったでしょー?(笑)
何言ってるんだ、私。
完全に、自虐行為。
高杉 日向
別に…?
成長止まっちゃうんじゃない?って思ってただけ
高橋 千晃
…成長?アハハ!もう成長止まってるから~(笑)
高杉 日向
今からでも頑張れば伸びるんじゃないか?
ただでさえ、小さいのに。
これから縮んだりしたらどーするんだよ
高橋 千晃
えっ!
でもでも!牛乳毎日飲んでるけど、全然身長伸びないよ!?
身長150㎝しかない私。
それに比べ、ひなくんは170㎝はあるだろう。
おまけにモデルみたいにシュッとした体型なんだ。
異性なのに、なぜか少し嫉妬してしまう。
高橋 千晃
あ!確か近くにコンビニあったよね?
行こうよ♪眠れない同士さぁ
歩いていける距離にコンビニがあったはず。
少しでもひなくんと話したい私はそう提案した。
高杉 日向
…無理
でしょーねぇ。
答えはNOだと分かって聞いている私。
そんなことでへこたれないんだから!!
高橋 千晃
よし!強制連行だぁー♪♪
私は嫌がるひなくんの腕を無理やり引っ張って
全力疾走した。


数分後…。
高橋 千晃
ゼェハァ…ゼェハァ…ハァ…
やっと、…着いた。

普段、あまり運動をしない。
おまけに運動神経が悪い私は、
少し走っただけでもう息があがってしまう。
高杉 日向
…何こんだけで息あげてんの
一方、ひなくんは全く疲れていないよう。
さすが…。
高橋 千晃
だってめったにこんな走ることないんだもんー
久しぶりに走ったよぉ(笑)
でも、楽しかったぁ!!
高杉 日向
何が楽しいの。意味わかんないから。
無理やり引きずられるこっちの身にもなってよ
そう言うひなくんを無視して、
私はコンビニに入っていく。
高杉 日向
おい…無視かよ
来るのを嫌がっていたはずのひなくんは、
私の後ろをついてきている。

素直じゃないのはどっちよ。
ちゃっかりついてきてんじゃない。
店員
いらっしゃいませー
高橋 千晃
あ、ね!
これ!これ、ひなくんいるー!?
丁度喉渇いてたところだし♪と
店頭に並んでいるジュースを指差した
そのペットボトルには何かストラップがくっついている。
携帯につけるストラップだろう。
でも、このストラップはないなぁ…と思う。
だって、キン肉マン、だもん。
しかもちょっと不細工な(笑)
高杉 日向
何、それ。そのストラップ、何?
高橋 千晃
キン肉マンでしょ♪
知らないのぉ?
私は、店頭に並んでいたそのペットボトルをドサドサと買い物かごに入れた。
高杉 日向
ちょ、え、は?何してんの?
高橋 千晃
奢ってあげるの。見てわかんない?
高杉 日向
奢るって、あえてそのストラップのやつ買うとか…
高橋 千晃
あ、ひなくん見てー。
これすっごいカッコイイよ!?ひなくんみたい(笑)
これも買おう
高杉 日向
はぁ!?どこが
って、はぁ!?買うのかよ!?
高橋 千晃
うん♪ひなくんは何にするー?
キン肉マン?ラーメンマン?
ミートくん?
おそらく、キン肉マンファン以外には、
喜ばれないであろうオマケ。
高杉 日向
いらないし!
高橋 千晃
私が買うんだから文句言わないで!
高杉 日向
いるー?って聞いた奴はどこのどいつだよ
ひなくんのことは無視して、レジに並び会計を済ませた。
高橋 千晃
はい
コンビニを出た後、
ひなくんにキン肉マンのストラップ付きペットボトルを渡す。
高杉 日向
……
無表情のひなくんは、相変わらず何を考えているのかわからない。
高杉 日向
…いらない
高橋 千晃
せっかく私が買ってあげたのに…?
そんなんじゃーモテないんだからー!
高杉 日向
そっちが勝手に買ったんでしょ。
モテなくていいから
そう言うひなくんの手に無理やりペットボトルを握らす。
渋々、受け取ったひなくんはうつむいていて、
どんな表情をしているのかわからない。
高杉 日向
千晃さぁ
こうゆうの、やめてくれない?
迷惑なんだけど
ひなくんの冷たい目に思わずごめん、って言いそうになる。
けど、頑張るって決めたから。
私は、負けない。
高橋 千晃
むしろ、私の方が迷惑なんだけど?
奢ってあげたのに、いらないって言われて。
急に冷たく接されるようになって。
高杉 日向
俺はいる、なんて一言も言ってないから。
…優しくされるのが嫌だって、そっちが…
確かに言った。
でも、その後にひなくんが、
"俺たち友達だろ?"って言ってくれたことを覚えてる。
私が冷たく突き放した後にも、
ひなくんは優しく接してくれていた。
そう、私が好きだと言うまでは。
高橋 千晃
確かに言ったよ?
でも、やっぱり途中で冷たくされるのは辛いよ。
いくら、私でも。
でも、ごめんね。いくら冷たく接されたって
私の気持ちは…好きなのは変わらないの…。
高杉 日向
あ。今、一瞬だけひなくんが、
泣きそうな悲しそうな表情をした。
なんで?どうしてそんな苦しそうな顔をするの
高杉 日向
ごめん。ほんとに…困るよ…
高橋 千晃
そう、じゃあこれもいらないか
私はさっき買ったペットボトルを手にとった。
ひなくんは無言でそのペットボトルを受け取ってくれた
高杉 日向
えーと…ありがとう、
そう、困った顔でお礼を言われた。
予想外過ぎてビックリ。
なんとなく、ひなくんが少し笑った気がした。
高橋 千晃
うん♪どういたしまして!
その後…。
少し話しているうちに、ホテルに到着してしまい、
私とひなくんは、別れて自分たちの部屋に戻った。

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