ひなくんにどこに行くか聞いたら、
着いてからのお楽しみって言われて、
連れてこられたのが…私の好きな遊園地!!
はい、と手を差し出してくるひなくん。
その手を、躊躇いがちにぎゅっと握る。
ひなくんと手を繋ぐのはどうしてもなれない。
ずっとドキドキしちゃうもん、
心臓破裂するんじゃないかってくらい。
恋人同士じゃないのに、手を繋いでる私たち。
不思議だよね、普通は恋人同士がやることなのに。
私たちはただの友達。
それでも、手を繋いでる今が。
ひなくんと過ごしている今が終わって欲しくない、
永遠に続くものであってほしい、と思う。
たとえ、これ以上の関係になれなくても…。
ひなくんの隣にいられるだけで、私は幸せだから。
少し残念そうな顔をするひなくん
ひなくんが好きなら、
お化け屋敷行ってもいいかなぁ。
だって、ひなくんがいてくれたら…
大丈夫な気がするから
あれ。私、いつの間にこんなに押しが強くなったんだろうか。
前までは押しが強くなりたくて頑張ってた。
けど、今は違う。
頑張ってなんかいない。
これが、私だ。
こんな可愛いこと言えるようになったんだ、私(笑)
ひなくんは、嬉しそうに私の手を引っ張ってお化け屋敷の中に入る。
私、恐怖のドキドキより、手を繋いてる方のドキドキの方が強くて全然怖がれないかもしれない(笑)
案内人からの説明を受け、
ようやく中に入る。
真っ暗でひなくんの顔も何もかもが見えなくなる。
ビビビビッ!!
いきなり変な音が鳴った。
まだ、そこまで怖くないなぁって平気だなって思っていたら
さっきまで繋いでいたはずのひなくんの手が離れていることに気づいた。
どこ行ったんだろう、ひなくん
ひなくんの悲鳴が聞こえてきた。
ひなくんが日本人形のお化けに追いかけられている。
え。そんなに叫ぶ??
笑いを必死に堪えながらひなくんに声をかける。
あ、だいぶ目、暗闇になれてきた。
ひなくん、日本人形苦手だもんねぇ。
それなのにお化け屋敷入るとか(笑)
ひなくんはいつも冷静沈着で、
ポーカーフェイスを崩さない。
でも今は本当に泣き出しそうな子供って感じ
そのGAPが可愛くてしょうがない。
後ろから聞こえてくるひなくんの悲鳴。
私は笑いをこらえながらスタスタどんどん前に進んでいく。
次の扉で最後みたい。
じゃあ、ここでひなくんを待っていようかなぁ。
なかなか現れないひなくんを待っていると…
半泣きのひなくんが私を見つけるなり走って抱きついてきた。
今、ひなくん。
ちーちゃんって呼んだ…?呼んだよね。
嬉しい。
本人はあせっていたから呼んだつもりはないのかもしれないけど(笑)
ひなくんはテンパっているのか、
いつもの冷静さは一切みられない。
なんか、新鮮でこーゆーデートもありだ。
それに、あのクールなひなくんが
私に抱きついてるのも新鮮
楽しいなーって思っていると、
ひなくんのすぐ横にいるお化けに気づいた。
ひなくんは、全く気づいていない。
教えてあげた方がいいかな?こーゆー時って。
ひなくんが私の言葉に横を向く。
うわぁ、
めちゃめちゃ透き通った声してるなぁ。
なーんて変なところに感心しながらお化け屋敷を出た。
ひなくんは目を擦りながらガラガラな声で言う
私が笑うと、ひなくんもつられて笑う。
うん、こーゆーの、良い。
ありあり、こーゆー関係も。
これからも、ひなくんと
こーやって笑い合える関係でいられますように…。
しかし、次の日になると。
私の幸せな気持ちは、一瞬でかきけされてしまう…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。