結局、二時間待っても
ひなくんが待ち合わせ場所に来ることはなかった。
そっと携帯を開く。
画面にはひなくんの名前。
私は息を飲み、思いきってボタンを押し、
電話を掛けた。
心臓の音がだんだん速くなるのを感じながら、
携帯をそっと耳にあてる。
"ただいま、電話に出ることが出来ません。
電波が届かない所にいるか…" 、
何度かけても、聞きなれた機械音がなる。
私はため息をつき、しゃがみこんだ。
ちょっと待っててって
二時間はありえないでしょ…。
あと30分待って来なかったら帰ろうかな。
携帯をしまい、
目の前を歩いていくカップルを見る。
すごく幸せそうで、思わず涙が出そうになった。
その時…。
ブーブーブー…。
携帯が鳴った。
電話だ…でも知らない電話番号。
ん?公衆電話から…??
私は躊躇いながらも通話ボタンを押した。
事故に遭った…。
ひなくんが…、?
光里ちゃんの話では
どうやらひなくんは急いでいたようで周りを見ていなくて、赤信号で走ってきた車にぶつかったらしい。
どうしてひなくんなの?
どうしてまた…。
またひなくんが私の前からいなくなってしまう…。
なんで?どうして、こんなことばかり起きるの?
神様っているのかな?
だとしたら、神様は意地悪だ。
でも、ひなくんが事故に遭ったのは、
きっと私のせいだ。
私が一番悪い。
こんなことになるなら、
"早くして"なんて、言わなければよかった、
きっと私のその言葉が、
ひなくんを急かしてしまったんだ…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。