第32話

衝撃
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2017/11/02 08:00
結局、二時間待っても
ひなくんが待ち合わせ場所に来ることはなかった。

そっと携帯を開く。
画面にはひなくんの名前。
私は息を飲み、思いきってボタンを押し、
電話を掛けた。

心臓の音がだんだん速くなるのを感じながら、
携帯をそっと耳にあてる。
"ただいま、電話に出ることが出来ません。
電波が届かない所にいるか…" 、


何度かけても、聞きなれた機械音がなる。

私はため息をつき、しゃがみこんだ。
ちょっと待っててって
二時間はありえないでしょ…。

あと30分待って来なかったら帰ろうかな。

携帯をしまい、
目の前を歩いていくカップルを見る。

すごく幸せそうで、思わず涙が出そうになった。

その時…。

ブーブーブー…。

携帯が鳴った。
電話だ…でも知らない電話番号。
ん?公衆電話から…??

私は躊躇いながらも通話ボタンを押した。
高橋 千晃
もしもし…?
??
もしもし。
公衆電話からですみません。
私。
高杉日向の妹の光里(ひかり)です。
高橋 千晃
えっ。ひなくんの妹?
そうなんだ!?
ひなくんに妹がいるなんて知らなかった…
私、高橋千晃。宜しくね!
??
あ、はい!宜しくです。
あの、それでいきなりで驚かれるかもしれないけど、
お兄ちゃん、少し前に事故に遭っちゃって…。
今、近くの病院にいるんです。
あ、でも!そんな大怪我というほどのものでもないみたいだし、命に別状はないみたいだし。
ただ、それだけ伝えたくて、電話しました。
お兄ちゃん、今日。
千晃ちゃんに会うって言ってたから…
事故に遭った…。
ひなくんが…、?

光里ちゃんの話では
どうやらひなくんは急いでいたようで周りを見ていなくて、赤信号で走ってきた車にぶつかったらしい。

どうしてひなくんなの?
どうしてまた…。
またひなくんが私の前からいなくなってしまう…。
なんで?どうして、こんなことばかり起きるの?
神様っているのかな?
だとしたら、神様は意地悪だ。

でも、ひなくんが事故に遭ったのは、
きっと私のせいだ。
私が一番悪い。

こんなことになるなら、
"早くして"なんて、言わなければよかった、

きっと私のその言葉が、
ひなくんを急かしてしまったんだ…

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