ひなくんが目を覚ました後のこと……
そう苦しそうに、でも笑顔で言うひなくん。
私の方が、夢を見てるんじゃないかと思う。
それくらい、私にとっては夢のような光景。
ずっと夢見てた、ひなくんと両思いになることを。
結局、私はあなたしか想えない…
ひなくんに好きっていってもらえただけで嬉しくて泣いてしまったのに、
ひなくんの"彼女"にしてもらえるなんて…。
ひなくんが何かいいかけたその時…
ガチャッ……
病室の扉が開いた
凄く可愛い女の人が勢いよく病室に入ってきた。
誰…?この人…。
お母さん…なわけないよね…?
ひなくんは普通にその人と会話をしている。
誰だか知らない女の人に私は嫉妬してしまう。
だって、さっきからこの人…
ひなくんの体ばっかり触ってるんだもん!
さすがにイライラしちゃう…。
それに、びっくりするほど可愛い。
ひなくんと…悔しいけど、お似合い。
…ハーフなのかなぁ。
髪の毛は綺麗な栗色でふわっふわで
"マシュマロ"みたいなほわーんとした女の人。
私みたいに"ちんちくりん"なんかじゃなくて、
スタイル抜群だし…。
ひなくんの好きなタイプ、そのもの…。
この人、花音ちゃんっていうんだ。
外見にピッタリの凄く可愛い名前…。
花音ちゃんは私たちに興味津々なようだ。
今まで一言も発することなかった愛と美幸が私の前に出た。
二人揃っていきなり、どうしたんだろうか。
何か気にくわないんだろうか、
美幸と愛はムッとした表情で答えた。
花音ちゃんの瞳…綺麗だと思うけど
なぜか私には怖く感じる。なんでだろう。
突然の花音ちゃんの発言に驚きを隠せない。
なんで、私のこと知ってるんだろう
花音ちゃんはそう言いながら、
ひなくんにガバッと抱きついた。
彼女…?
彼女、いたんだ。
しかも、こんな可愛い彼女が…。
なのに、何でさっき、"好き"なんて言ったの?
ひなくん…。
愛は私の顔を見て、しまった、という顔をして
黙ってしまった。
二人とも、さっきのひなくんと私の話を聞いていたから
おかしいと思ったんだろう。
ひなくんは面倒くさそうに言ったけど、
否定はしなかった。
ホントに、花音ちゃんが彼女なんだ…
そっか、そうだよね。
ひなくん、カッコイイし、
花音ちゃん、可愛いし。
お似合いカップルって感じだし。
二人は付き合ってる。
理解しようとするけど、ダメだ。
何か、体の奥から込み上げてくる。
ひなくんの隣で笑う花音ちゃん。
べたべたくっつく花音ちゃんに
時々面倒くさそうにするけど
しょうがないなーといった感じに
微笑んでいるひなくん。
私が入る隙間なんてないんだ…と、
見せつけられた気がした…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。