入学式。
初めて君に出会って君に興味がわいた。
そんな君と同じクラスになって君は俺の斜め後ろの席だった。最初はただ興味本位で近づいただけだったのに…
皆が嫌がる事を率先してやっている所。
宿題や授業は真面目に取り組んでいる所。
ノートに取る字が綺麗な所。
クラスメイトが面白いことを言えば、
クスクスと笑っている所。
悪口を言われても何も言い返さず我慢している所。
走り方、手のあげ方、話し方、少し強がりな所…
君の全てにいつの間にか夢中になっていた。
俺にとって初恋だった。
初めてこんなに人のことをもっと知りたいと思った。
初めて離したくないと思えた女だった。
君と過ごした日々は、
俺にとっての思い出であり宝物。
一緒にはなれなかったけど、
君と出会えて良かった、と…そう心から思える。
今はもう会えない…けど、
この空の下、君も生きているのだと思うとまた今日も頑張れる。
千晃のことを思いながら空を見上げていると…
俺がそう言い指差すと、
バッと振り返り月を見る…
俺と花音の間に産まれた子供。
名前は千夏(ちなつ)。
千夏ももう5歳。
千晃とさよならをしてからもう5年の月日が流れた…
あれから5年も経つのか…と思うと時の流れは早いものだと感じる。
あれから1度も俺は泣かなかった。
千晃と約束したから…
幸せになる、と。笑顔でいる、と。
でもなぜだろう。
こんな月が綺麗な日には君を思い出してしまう。
ねぇ千晃…。
千晃と離れてからもう5年も経つんだね。早いね。
俺の子供、千夏っていうんだ。
千夏って名前は俺がつけた。
千晃の千を貰ってつけた名前。
俺の1番はいつだって千晃だったから。
1番の名前をこの子にもつけてあげたいって思ったから。運よく、花音は千晃の漢字は知らなかったから。
千晃は今ちゃんと幸せになれてますか?
元気にしていますか?あの俺が好きだった笑顔で…
今日は七夕。
願いが叶う日だ!と千夏は願い事を短冊に書いていた。
もし、願いが叶うなら…
もう1度、千晃に会いたいな。
会って色んなことを話したい。
千夏のことだって紹介してやりたい。
きっと子供好きの千晃だから可愛い可愛いうるさいんだろうな。
千晃のことを想う度、胸が苦しくなる。
千晃…いつか本当に会えたらいいな。
その時には思い出にできてるかな?
千晃…ありがとう。
*番外編*END
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!