第50話

Interlude
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2019/12/27 09:48
聖蘭高校の新校舎と旧校舎、二つの校舎を結ぶ渡り廊下。

その手すりに肘をついて、怜は虚空こくうを眺めていた。

「……ぁ、あの!」

右方向から声がかかった。頬杖をやめてそちらを見ると、見覚えのある女子がいた。

「……あなたの友達の、春田さんだよね。何か用?」

「……えっと、用って言うか……その、よかったんですか?」

「敬語じゃなくていいよ。何のこと?」

「――あなたちゃんのこと。好き、なんじゃ……」

視線は地面にいっていたが、一生懸命に由麻は言った。

それをすぐ察した怜は口元に笑みを浮かべ、穏やかな声音で答えた。

「昔はそうだね。あなたを“幸せにしたい”って思ってた。でも、今は違う

あなたに、“幸せになってほしい”って思ってるよ。

そのために二人をくっつけた。オレの勝手な願いを半ば無理やり叶えさせたようなものなんだ。だから、春田さんが気にすることじゃないよ」

「…………」

違う、と、由麻はこの時思っていた。

「(そうじゃない。由麻が聞きたかったのは、そんなことじゃ――)」

「ねぇ」

「はいっ!」

びっくりして由麻の声が裏返りかける。が、特に気にする素振りもなく怜は尋ねた。

「オレはまだここにいるけど、春田さん、中野さんといなくていいの?」

「……みうちゃん、は……」

――由麻の背中を押して送り出してくれたから、どこにいるかわからない。

喉元まで出かかった言葉を飲み込む。怜はそんな由麻の様子を観察し、言った。

「そっか。じゃあオレがどこか行こうかな」

ひらひらと手を振って、怜は由麻と逆方向の、主に教室などがある新校舎へ去ろうとする。

「っあ……!ま、待って!!」

由麻は思わず引き止めてしまった。怜が足を止めて振り返る。

チャンスは『今』しかなかった。

(せめて、告白できなくても……!!)



「――新しい恋、とかどうですかっ!?」





「……オレといても楽しくないよ」

「え……」

小さく声を漏らした由麻に、優しくも儚げな微笑みを返すと、怜は今度こそ新校舎へ去っていった。

由麻は動けず、その場に立ち尽くしていた。

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