第56話

好き
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2018/02/16 11:05
三上が開けたのは、グラウンドを出て右方の体育館へ行く途中にある、男子ソフトテニス部部室のドアだった。

何気に入るの初めてだ……。

そう思ったのもつかの間、バンッ、と耳元で大きな音がした。

驚いて顔を上げれば、迫ってくる三上に気付く。何をされようとしているか一瞬でわかった。――キスだ。

ドアはすぐ側にあったが、両手で壁ドンされていて逃げ場がない。

えっ、待っ……!



私は咄嗟に三上の口を自分の手のひらで覆った。



「……あ、…………悪い!!」

我に返った三上が、顔を真っ赤にして私から離れ反対側の壁まで一気に後ずさった。

少し罪悪感や不快にさせたかもという不安などもあった私だが、私以上に動揺している三上が面白くて、全部吹き飛んでいった。

「ふっ……」

笑いが抑えきれずに溢れる。ふふっ、と声が出てしまい、三上の視線を感じた。

「……急がせたくなかったけど、返事……聞かせてくれねぇか?」

え、と思って三上を見る。三上は床に座り込んで、顔を片手で覆っていた。

「正直結構期待してたり……して……その、聞きたい……」

項垂れるようにだんだん頭を下に下げていく三上。


……なんか、本当ストレートでこっちまで照れる。


てかわかってなかったんだ。とっくにバレてると思ってた。

もう、三上を嫌いじゃなくて――――



「好き」



静かな部屋に、私の声が染み渡る。


「三上が好きだよ。今までいろいろごめん。

付き合ってください」

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