第3話

初対面(はつたいめん)
15,830
2019/12/27 03:35
三時間目は生物基礎で、移動らしい。

由麻が一緒に行こうと誘ってくれ、二人で移動することになった。

廊下を歩きながら私は由麻に尋ねた。

「由麻、私と行っていいの?」

「何が?」

きょとんとする由麻。

私は少し言葉を選んで言った。

「いつも一緒に行く子とかいるんじゃないの?」

「あぁ、うんいるよ!でも今日は風邪で休みなんだ。転校生見たかったーって残念がってたよ」

「校内スマホ使用禁止じゃなかったっけ?」

「朝学校来るときLIMEしたの」

「あね」

ふと、前方から見覚えのある男子がやってきた。

どこだったかな……と考えたが、数秒で飽きて由麻に話しかけた。

そして、その男子とすれ違う直前。


「なぁ」


近くで声がして、無意識にそちらを向けば――何かが顔の横を通り抜けた。

視線を上げると、さっきの男子の顔が超近距離にあった。

左側に目をやれば、そいつの腕があった。「何か」の正体はこれか。

つまり私は、目の前の男子に――いわゆる『壁ドン』をされたらしい。


いや、は?


「今どんな気持ちだ?転校生」

自信満々に聞いてくる男子は、かなり端正な顔立ちをしていた。

あーどっかで見たことあると思ったら、こいつか。例のイケメン。

で、今どんな気持ちか?そんなの……。

「早く移動しなきゃいけないのに邪魔されてうざいな、だけど」

相手の目を見て私はキッパリと言った。

「はっ、そう……え?」

いかにも俺様な態度で何かを言いかけて、男子の表情から余裕が消えた。

漆黒の瞳で食い入るように見つめられる。

うわ、何こいつ……邪魔だっつったのにまだどかないの?日本語わからないの、日本人じゃないわけ?

「行こ由麻」

私は身を屈めて男子の腕の下をくぐり、スタスタと歩き出した。

「えっ……!?あ、あなたちゃん!」

慌てて追いかけてくる由麻の足音を背中で聞いて、私は歩調を緩めた。


イケメン男子がわなわなと震えていることも知らず。

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