顔を上げると――ちょうど話題に出ていたあの男子と、知らない茶髪の男子がいた。
茶髪の男子は板チョコを食べている。ということは、さっき私の名前を呼んだのは三上遼介の方か。
「何?」
「来い」
三上遼介がそれだけ言ってくるりと私に背を向けた。
……何こいつ。無視しよ。
私は箸を止めず、戸惑う由麻の視線を感じながらも気付いていない風にして弁当を食べ進めた。
少し経って、三上遼介が急に振り向いてきたと思えば近くで叫ばれた。
「おい!なんで来ないんだよ!」
――はぁ?
「逆になんで来ると思ったわけ?人が昼ごはん食べてる最中にいきなりやってきて『来い』だけ言って。行き先も教えられてないのに、はい行きますってついていくわけないでしょ」
鋭く睨みつけて言い切り、コロッケを食べる。
まじ何なのこいつ。絶対友達いないだろ。隣の人はきっと優しいから一緒にいてあげてるんだな、可哀想に。
「お前、俺からの誘いを断るのか?」
「そう。わからなかったの?理解力ないね」
「理解力がない!?俺がか!?」
「他に誰がいるの」
てか驚く意味が不明、と後に付け足す。
そうしたら、突然三上遼介が静かになった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。