第16話

初崎怜
11,071
2019/12/27 04:11
「茶髪男子」という情報のみでわかったらしい二人は、ほぼ同じタイミングで言った。

「初崎怜のこと?」

「初崎怜くんのこと?」

「初崎怜……」

聞いたことあるような、ないような。

「三上くんのそばにいるからあんま目立たないけど、初崎くんもなかなかイケメンよね」

「うん……かっこいいよね」

由麻がぽそっと呟いた。

ここで私の中に“ある仮説”が立ったが、あえて口には出さず別のことを言った。

「ふーん……ここらへんの出身?」

「んー、そのへんはよく知らない。由麻わかる?」

「ううん、由麻も知らない……ていうか、急にどうしたの?あなたちゃん」

由麻に問いかけられ、私は話そうか少し迷った。

『思った通り、変わってないね。あなた』

「初崎怜」の言葉とあの微笑みが蘇る。

……あの人が私の知り合いだって確証はない。はっきりするまでは言わないでおくか。


登校したクラスの女子三上教信者達がさっきから聞き耳立ててきてるし。


「昨日ボール拾いに行った時ちょっと話したから気になっただけ。それよりみう、そろそろHRホームルーム始まるけど席戻んなくていいの?」

「おぉっ、そうだわ!ありがとあなた!」

みうが自分の席に走っていって、聞き耳を立てていた女子達もわいわいと会話を始める。

私は頬杖をついて小さく息を吐いた。

結局、詳しいことはわからずじまいか……。初崎怜……んー、小さい頃から親の転勤であちこち行ってたし、もしかしたらそのどっかで会ったのかな…………わからない!

思考を放棄して、私はさっきより少し大きいため息をついた。

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