しばらく無言だった由麻が遠慮がちに口を開いた。
「えっと……それじゃああなたちゃんは、今は初崎くんのこと好きじゃないの?」
「そうだよ」
「ふぅん……そっか」
……嬉しそうだねぇ。
なんとなく微笑ましい気持ちになって由麻を眺める。
「あなたニヤニヤしてどうしたの?怖いよ?」
「せめてキモいと言ってほしかった」
笑っているのに怖いとは。そもそも笑い方の表現が“ニコニコ”じゃなく「ニヤニヤ」なのか。どんな顔してたんだろう私。
「そういえば、あと少しで文化祭だね」
由麻がニコッと笑って言った。
あ、ここはまだだったんだ、と思っていると、みうがこちらに顔を向けてきた。
「いつからだっけ?」
「私転校生」
私が聞きたいです。
「11月の初めだよ。もうすぐ係決めとか出し物決めとか始まるんじゃないかな」
「文化祭か……今年二回目だ」
「えっ、なんで!?あ、前の学校は5月とかだったのか!何それ転校生いーな!!」
「……そうでもないよ」
文化祭がなければ、出会うこともなかったかもしれないから。
少し声のトーンが暗くなってしまい、二人から不思議そうな顔をされた。
だが何も聞いてはこなかった。その優しさに、口には出さず感謝した。
「『告白大会』楽しみだなぁ」
「『告白大会』?」
由麻に聞き返せば、みうが説明してくれた。
「文字通り、告白する大会だよ。って言っても全部が全部恋愛の告白じゃなくて、実は〇〇しました!みたいなぶっちゃけもあるの。というかほぼそれって聞いた」
「なるほど……まぁ全校生徒の前で告白する勇者はいないよねこの時代。LIME告白って言葉があるくらいだし」
「でもさ、全校生徒の前で告白されるの、いいよね!“俺のだ!”って主張されたりしてみたい」
「「…………へぇ」」
由麻ってそうなんだ……と思いながら見る(多分みうも同じ気持ち)と、私達の空気に気付いた由麻が「えっ!?」と戸惑いの混じった驚きの声を上げた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!