――あっという間に、文化祭当日。
ところで、出し物に関して聖蘭高校には縛りがある。
三年生しか飲食系の出し物が許されていないのだ。
そして動画系は各学年1クラスのみ。その権利は、公正なくじ引きの結果残念ながら4組に取られてしまった。
1-1は、絵がハンパなく上手いクラスメイト数人が描いた黒板アートと、その他全員が5つずつ作った箱をそれっぽく積み重ねただけのよくわからない展示だ。
なので当然、教室を訪れた人達は黒板アートばかり見ていた。
「ま、そうなりますよねー」
「黒板アート超すごいからね。それに比べてあのピラミッド達。しょぼすぎだわ」
「多分なくても変わらなかったよね……なんて、言っちゃダメか」
「いや、激しく同意」
「私も」
みうと私が真顔で言うと、由麻は困ったように苦笑した。
うん、由麻はちょっと優しすぎだな。言いたいこと言っていいんだよ、三人でいる時くらいは。
「そうだ、あなたちゃんは遼介くんと回るよね?いつから?」
「は?」
意味がわからなくて顔をしかめると、由麻はきょとんとした。
「……えっ、誘われてないの!?」
「誘われたよ。断っただけ」
「え!?」
「あっはっは!!マジかあなたー!!揺るぎないね!」
腹を抱えてみうが大爆笑する。
逆にみうは誘われたら一緒に回るの?
「す、すごいね……あなたちゃん。由麻だったら噂とか気にしちゃって断れない」
……なるほど。由麻が踏み出せない理由はそれか。
「周りなんか気にするだけ損だよ。興味あるうちは好き勝手言うけど、どうせ、時間が経ったら関心なくなって放置になるから」
「――そうなの……?」
「うん。誘いたい人いるなら、後悔しないように誘わないと。時間は巻き戻らないよ」
経験から出る言葉だから、どうしても重くなってしまって苦笑が漏れた。
自分だって、電話もできてないくせに――。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!