第44話

全部、伝えたい
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2019/12/27 05:10
告白大会が始まる直前。

怜は、俺に言った。

「遼介。告白大会出ないの?」

「…………」

答えられないでいると、怜は右手に持っている板チョコに齧り付いた。

「そう。じゃあオレ出ようかな」

パキン、と軽い音が耳に届いてくる。

――俺は自分の耳を疑った。

「は……?お前、目立つの嫌いだって言ってなかったか?」

「言ってたね」

「なのに出るのか?」

「うん」

怜は板チョコを食べながら無表情で言った。

「オレ結構な衝撃発言するよ。だから遼介、聞いててね」

まさか……告白か?

違うよな?そうであってくれ。

お前がもし『あいつ』に告白したら、『あいつ』は――……。

沸き上がる不安を隠し、俺は「あぁ」と呟いた。



ーーーーーーーーー



確かに、衝撃的な発言だった。

あいつの初キスは俺じゃなかった。幼い頃それを奪っていた怜は、あいつとその頃両想いだった。

初恋同士。俺に入り込める隙はないのかもしれない。

でも――――何もしないで負けることは、俺にはできなかった。

「……遮って悪い怜。マイク、貸してくれ」

ステージに上がった俺はそう言って、目の前の怜(ライバル)に片手を伸ばした。

ふ、と怜が笑った。

「やっと来たね」

「……?」

疑問の表情で怜を見る。怜はその隙にマイクを通してあいつへ言った。

『あなた、オレとこれからも友達でいて』

……友達?


は?告白じゃないのか?


「うん」

しっかりとした答えを聞いて、怜はにこっと目を閉じて笑うとマイクを俺に預けステージから降りた。

ステージの中央に取り残される俺。



…………は?



『初崎怜くん、ありがとうございましたー!!さぁ次は学年一、いや学校一のイケメン三上遼介くんの告白です!!』

「「「イェー!!!」」」

『さぁ何を言ってくれるんでしょーか!?』

勝手に場を盛り上げる生徒会長。その通りに盛り上がる、開始時よりも数を増した大勢のギャラリー。

俺は瞬時に悟り、マイクを持っていない手で顔を覆った。

……つまり、俺は怜にまんまと乗せられたってことかよ……。

重い息を吐き出して、ほぼ無意識に指の隙間からあいつを盗み見た。

視線が合った。たったそれだけでドクンと心臓が大きな音を立てる。俺は顔を覆う手を下ろしてあいつを見つめ、静かにマイクを口に近付けた。


俺の想いを全部、迫田に伝えたい、と心の底から思った。

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