告白大会が始まる直前。
怜は、俺に言った。
「遼介。告白大会出ないの?」
「…………」
答えられないでいると、怜は右手に持っている板チョコに齧り付いた。
「そう。じゃあオレ出ようかな」
パキン、と軽い音が耳に届いてくる。
――俺は自分の耳を疑った。
「は……?お前、目立つの嫌いだって言ってなかったか?」
「言ってたね」
「なのに出るのか?」
「うん」
怜は板チョコを食べながら無表情で言った。
「オレ結構な衝撃発言するよ。だから遼介、聞いててね」
まさか……告白か?
違うよな?そうであってくれ。
お前がもし『あいつ』に告白したら、『あいつ』は――……。
沸き上がる不安を隠し、俺は「あぁ」と呟いた。
ーーーーーーーーー
確かに、衝撃的な発言だった。
あいつの初キスは俺じゃなかった。幼い頃それを奪っていた怜は、あいつとその頃両想いだった。
初恋同士。俺に入り込める隙はないのかもしれない。
でも――――何もしないで負けることは、俺にはできなかった。
「……遮って悪い怜。マイク、貸してくれ」
ステージに上がった俺はそう言って、目の前の怜(ライバル)に片手を伸ばした。
ふ、と怜が笑った。
「やっと来たね」
「……?」
疑問の表情で怜を見る。怜はその隙にマイクを通してあいつへ言った。
『あなた、オレとこれからも友達でいて』
……友達?
は?告白じゃないのか?
「うん」
しっかりとした答えを聞いて、怜はにこっと目を閉じて笑うとマイクを俺に預けステージから降りた。
ステージの中央に取り残される俺。
…………は?
『初崎怜くん、ありがとうございましたー!!さぁ次は学年一、いや学校一のイケメン三上遼介くんの告白です!!』
「「「イェー!!!」」」
『さぁ何を言ってくれるんでしょーか!?』
勝手に場を盛り上げる生徒会長。その通りに盛り上がる、開始時よりも数を増した大勢のギャラリー。
俺は瞬時に悟り、マイクを持っていない手で顔を覆った。
……つまり、俺は怜にまんまと乗せられたってことかよ……。
重い息を吐き出して、ほぼ無意識に指の隙間からあいつを盗み見た。
視線が合った。たったそれだけでドクンと心臓が大きな音を立てる。俺は顔を覆う手を下ろしてあいつを見つめ、静かにマイクを口に近付けた。
俺の想いを全部、迫田に伝えたい、と心の底から思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。