第61話

After_1
4,170
2020/03/16 23:50
急な更新すみません。放置してしまっていた伏線の回収に来ました。(伏線ってほどでもないかも)

割とシリアス&甘めなのでご注意を、笑

次のページと合わせてひとまとまりの話になります!

是非最後まで読んでいってください^^*



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とある居酒屋の個室に入る。相手は私に気付くと、優しく表情を緩めた。

「おめでとう」

開口一番、そう言ってくれた怜に、微笑んでみせて向かいに座る。

「ありがと。私もびっくりだけどね」

「そうなんだ。時期とか色々考えてそうだけど」

「あー、考えてくれてたよ。私が忙しい時は全然触ってこなかった」

「なるほど。それで、どんな反応だった?妊娠のこと伝えた時」

怜は単純な興味という感じで無表情のまま尋ねてきた。

が、私はすぐに答えることができなかった。

だって、


『……ありがとな。本当、愛してる。子供が生まれても、一生愛してる』


……とか思い出すだけで恥ずかしい言葉言えるわけない!!

……嬉しかったけど……!

「まぁ言いにくかったら言わなくていいよ」

「あ……そう?」

「うん。大体想像できるし」

当然のような顔で言う怜。

私は思わずふっと吹き出してしまった。

「あいつほんと分かりやすいもんね。いっつもほぼ顔に書いてある」

「本人が気付いてないところがまた面白いよね」

「それ!バカ正直でさ、かわ……」

はっとして止まった。

恐る恐る怜を見れば、形の良い唇が綺麗な弧を描いている。

そして、それはゆっくりと開き。

「いい」

「っあー!!違う、今のは違うの!!そんなこと思ってないから!!」

「うんうん」

口先で頷きながら、楽しそうに笑う。

こういうところほんと変わってないな……。

「何飲む?」

「あ、飲む前に……っていうか」

なかなか上手い言い方が見つからず、その、と言い淀んでしまう。

怜はただ私を見つめた。ゆっくりでいいよと、視線が語っていた。

……こういうところも、本当に、変わってない。

「ねぇ怜、ずっと誰にも話せなかったこと聞いてくれる?」

微笑すると、怜は無表情で「うん」とだけ言った。

それに安心して、口を開いた。


「……中学の時、友達が妊娠したの。


怜が目を見張った。けれど静かに、続きを話されるのを待っている。

私は少し深めの呼吸をして、話を続けた。

「私がね、梨沙の彼氏とちょっと仲良くなったの。まぁあっちが絡んできてなんとなく……って感じなんだけど、大学生で女慣れしてるからか、話が上手くて予想外に盛り上がっちゃったんだよね。それで梨沙が不安になって、ずっと断ってた誘いに……乗ったみたいで」

当時の光景が蘇ってくる。――身を蝕まれた後悔も。

「私のせいなの。梨沙は自分が弱かっただけって言うけど、初めての彼氏だったみたいだし、相手は大学生できっと普段からずっと不安だった……。それに気付かなかったどころか、私は、梨沙の妊娠の原因を」

「あなた」

怜が強く私の名前を呼んだ。真っ直ぐな、そして気遣うような瞳に、私は小さく微笑む。

「……うん。分かってる。こんな後悔、意味なんかない。梨沙は許してくれてるし、あの大学生とはもう縁が切れてる。でも」

私は膝の上で両手を組み、ぐっと握り込む。

「私は……自分を簡単に許したくなかった。なのに多分、許されたかった。梨沙が本当に気にしてないって保証がほしくて、遼介と付き合う前、梨沙に会いに行ったんだと思う。……自覚したのは最近だけどね」

過去を清算しに行ったつもりだった。だけどそうじゃなかった。


清算なんてこと自体、自分が辛かったことを、どうにかしてその辛さを消そうとする行為じゃないか。


……本人から許しを貰った今はあの時ほど深刻に梨沙の妊娠この出来事を捉えてはいない。それでもどこかに、私の内側なかに塊のように残っていて、できるなら吐き出したくて。

遼介には言えない。言えばあいつは行き過ぎなほどに共感してくれるだろう。それに今、妊娠関連の話でギクシャクしたくないから。


沈黙の間、私は自分の手を見つめ続けた。怜の方は見なかった。

「……聞いてくれてありがと怜。じゃ、」

飲もっか。そう言おうとした時だった。


私は、怜に抱きしめられていた。


「……本当は、こういうことしたらダメなんだろうけど」

独り言のように怜が呟く。

「オレしかいないよ。ここには」


――だから、この状況をどう利用するかは、君次第。


したいようにしていいよ。


音にされてない怜の言葉が、聞こえた気がした。

「……――」

答える代わりに、怜の腕の中で俯いた。

怜には、与えてもらってばっかりだ。


涙は出なかったけれど、心が軽くなったように思えた。

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