第16話

16.
7
2018/08/25 13:12
先生の話し終わって沈黙の時間が流れる。
「あの...」
質問が終わってから話そうかどうしようかずっと迷ってたこと、話してもいいかな...。
「ん?」
先生の目が私の目を見る。
「部活のこと?」
なんでわかっちゃうかなあ...。嬉しいけど。
「あの、はい。...部長ってやっぱり難しいですね。私、先輩がいる頃からきっと自分が部長になるんやろうなって思ってたんですよ。同じ学年で試合に出てたのは私とあと1人で。その子はエースって言われてて、私が言えることじゃないけどメンタル強くなくて、それは私もやけど先輩たちには安定しとるとけ落ち着いとるって言われてたから...その子がミス続いたときとか同じ学年の子がコートに入ってきたら部長の先輩が声掛けてあげて、って私に言うし、そのときの立場で頼られるのはまだ良かったんですよ。でもそれと自分が部長になるのは違う」
「違った...?」
「私がそうやってプレーできたのはいざと言うときに頼れる人がいたからで。1年生のとき、私、リベロの先輩と2人でカットしろって言われてたし、ポジション的に攻撃も繋ぎもブロックも守りも全部こなさなきゃいけなくて、全部できて当たり前みたいに思われてて辛かったんですけど、私より上手い先輩がいて助けてくれて声掛けてくれて。...でも今は...誰に頼ったらいいかわかんない。...頼れる人がいない。去年、部長の先輩は全部できてた。弱音なんて吐かんしみんなの前で泣いたりしないし」
去年1年間そんな先輩を見てきたみんなは、きっと部長ってそういうものだって思ってる。私だってそう思ってる。
「でも、松本は松本だよ」
「え...?」
「それは前の部長の話でしょ?松本がそうなる必要はないんじゃない?それにみんなにも頼ったらいいんだよ」
「でも、みんなもいっぱいいっぱいなのに私が迷惑かけれない...部長なのに、部長だから、私がみんなを助けてあげないと...」
「松本」
私の名前を呼ぶ先生を見るととても優しい顔をしていて、なぜだか涙が出てきた。
そういえば、あの日もこんなことあったなあ...

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