第10話

奏楽の秘め事
67
2017/10/27 15:46
―――pipipi…



目覚ましが鳴り響くそんな朝の始まり。

 なんだ…、子どもの頃の夢かぁ。





広く澄み渡った朝の空。

今日もいつも通りの朝。




かつては少年も周りの友人たちとなにも変わらない、ただの少年だった。

幼少のあの頃、原因不明の病気によって声を失くすそのときまでは。

不運な事故によって家族を失い独り、この世界に残されるまでは。

口のきけない、血のつながりだけの少年に

誰も話しかけてくれようとはしない。




ただ朝からずっと、窓からずっと。



空を眺めてばかりの少年の側は、空っぽのままで。





誰とも口のきけない、声を失った少年:奏楽(18)。






『おはよう 奏楽』

(おはよう 空。今日もいい天気になったね)





声を失った少年は今、この空と”ひとつ”に支えあって生きている。

プリ小説オーディオドラマ