部屋へと続くきしむ廊下を歩きながら先を歩く玲凪の背中に率直な疑問をぶつけてみる。
すると、玲凪が急に立ち止まったかと思うと苦々しい顔で振り向いた。
(な…に?)
いつもそばにいた親友の見透かしたような表情がどこまで見透かしているのかが読み取れなくて恐ろしいような、不思議なような戸惑いに陥る。
……ドクン。
核心をつかれた鼓動が、あたしの内側で反応する。
いつも不安そうでおどおどしている玲凪とは似てもにつかないほど、その目は不安に満ちていながらもまっすぐ、しっかりとあたしを見据えている。
玲凪の真剣な目をみていられなくてそらそうとするあたしに玲凪が続ける。
玲凪の目は真剣だった。確証などないけれど根拠と呼ぶには十分なほど思いに満ちた目だった。
言葉に詰まる。
(霊感のある玲凪なら…きっと。でも…)
普通なら信じられるはずもない話。
信じてくれる。信じてくれない。
二つの想いの隙間で決意が、揺らぐ。
(でも…)
ぐっと込めた力で、右手を固く一度握りしめる。
どれくらい過ぎただろうか。
二人の間に少し、沈黙流れた。
玲凪の部屋で、話を聞き終えた玲凪が気を落とした調子でそうつぶやく。
迷いのない玲凪のまっすぐな言葉に思わず、耳を疑う。
信じてもらえるってことがこんなに嬉しいことだと、初めて思えた。
初めて気づいて、そして…涙が滲んだ。
優しい玲凪の言葉にまた目頭が熱くなる。溢れて、溢れて零れ落ちそうになった涙をそっと見えないようにうつむいて袖で拭った。
(見える人。その人なら、わかってくれるかな…斗真のこと)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。