そういって後輩のミナちゃんと、優那(ゆな)ちゃんが部室を出ていく。
斗真がいなくなった後、高校二年生になったあたしは今、天文部を立ち上げ、その部長を務めている。
しかし、部員はいまださっきの一年生の二人と、あたししかいないような状況だ。
(もう少し部員増やしたいな… ね 斗真)
斗真の残していったあの望遠鏡をぎゅ…っと抱きしめて誰もいなくなった部室でそんなことを思っていると、部室内にノックの音が響き渡り続いて誰か男の子の声がする。
部室の扉を開いて、立っていたその男の子を見ておもわず言葉を失う。
優しそうな目元、柔らかそうでちょっとクセのある髪。
それはまるで斗真を思わせるような面影があった。
何かに気づいたように向こうも黙り込んで、一沈黙置いた後あたしは男の子の用を思い出して対応にあたる。
あたしが入部届を手渡すと、すぐそばにあったテーブルに用紙を置いて記入を始める。
書き上げた入部届を男の子から受け取り、参考がてら読んだ名前で目がとまる。
そこで斗真のなくなったとき、病室で斗真の傍らで母親と一緒に泣いていた男の子が思い出される。
(斗真の、弟だったんだ…。
だから似てるんだ。優しそうなその瞳も、その髪も…)
考え出したら止まらなくなってたまった涙は頬を伝って床に滴り落ちる。
突然泣き出したあたしに、どうしたらいいのかわからず新真くんは困った顔あわてる。
泣き顔を見られたくなくて新真くんの胸に顔をうずめる。
新真くんがしばらく黙り込んだ後、突然思いついたようにこう切り出す。
『校舎の裏庭で二人で流星群を見たら結ばれる』。
ふとミナちゃんたちの言っていた噂が頭を巡る。
あたしがくすっと笑ってうずめた顔を上げると、照れたような顔で横を向いて視線をそらす。
頬を赤らめながら目をそらしたままの新真くんから離れて、あたしは軽く背伸びをして窓に歩み寄ると部室の窓からすっかり暗くなった空に瞬く星を見上げる。
(ね。斗真。まるで”運命”みたいだね…。)
幾千もの星のなか、一番小さな星が一度だけキラリと瞬いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。