あなた「それで、先生からはなんて言われているんですか?」
何だか萌花先輩の心の中に
入り込んでしまっているのが
申し訳ない気もしてきた。
萌花先輩「先生?……あ、うんとね……えっと」
あ、これは聞いちゃいけなかったやつだ
先輩はいつも自分が言いにくいことになると
声が少し高くなる。
萌花先輩「……わかれよって……言ってた、うん 」
あなた「……すみません、」
萌花先輩「えっ?いいのいいの!だって、話さなきゃ前に進まないでしょ?」
この状況でも後輩に気を遣うだなんて
なんて優しいんだろう。
いや、優しすぎるんだ。
あなた「……先生はそれでいいんですか?」
萌花先輩「いい訳ない、よ 。だってはじめて付き合った人だもん」
あなた「そうですよね、……でも」
萌花先輩「……でも?」
言えるわけない、先輩が優しすぎるんだって
先輩がつけ込まれていたんだって
……利用されていた、だなんて
あなた「いや、何でもないです!」
萌花先輩「あ、そうなの?」
そんなとき階下から聞こえたのは
夜ご飯を告げる声だ。
あなた「す、すみません先輩……」
萌花先輩「あ、夜ご飯でしょ?笑」
あなた「あ、聞こえてましたか?笑」
萌花先輩「うん!お母さん元気な人なんだね!」
めっちゃ恥ずかしい←
これだからは私の母は……
萌花先輩「それじゃ、切るね!」
あなた「すみませんでした、先輩」
萌花先輩「ううん、やっぱりあなたちゃんは人を励ます才能があるよ!」
あなた「えっ?」
萌花先輩「ううん、バイバイ!」
次に表示された画面には
ありがとうと書かれた可愛らしい
スタンプが押されていた。
「ありがとうございました」
と書かれたスタンプを押し、
私は階段を駆け下りた。
萌花先輩は……
不思議な人だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!