渡されたワークブックには
赤いペンで書かれた『再提出』 の文字
佐村「ちゃんとやらないとダメだからね?」
あなた「……はーい」
佐村「でも石崎さんは頭良いから出来るはずだよね?なんでやらなかったの?」
……ただ花恋のことがショックで
心が痛くて、数式なんて見たくない
ただそれだけなのだ
佐村「……もしかして構ってほしいの?」
あなた「……えっ?どうしたんですか?」
佐村「えっ、いや、忘れて?」
佐村先生はそう微笑むとこう続けた
佐村「ところで学校はどう?楽しい?」
あなた「……えっと、楽しいです」
もっと話したいのに
……会話が終わっちゃう
佐村「そっか、それならいいんだけど」
ふいに鳴った携帯の通知音に
先生は携帯を開く
……ホーム画面にいたのは
先生と1人の美しい女性だった
あなた「……先生っ、結婚されているんですか?」
驚いたような顔で私を見ると
悲しそうな目をしてこう言うのだ
佐村「3年前に、亡くなってね」
これ以上聞いてはならないのだと思いつつ
私は頷いた
佐村「……事故だったんだ、自動車との」
後で知ったことだが3年前に
奥さんが横断歩道を歩いていたところを
信号無視の車がひき逃げしたそうだ
佐村「……即死だったのがまだ良かったのかもしれないけど、僕はきっと犯人を許すことは出来ないんだよ」
画面の中で結婚指輪をはめて
笑う2人は
もう会うことは出来ないのだ
……好きになってしまってごめんなさい
佐村「……ごめんね!暗い話をしてしまったね」
あなた「い、いえっ!誰にも言いませんから」
先生のその悲しげな顔は
きっと一生忘れられない
佐村「仏壇にはアイビーを供えていてね、妻が好きだったから」
……アイビーの花言葉は
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。