『あーちょい待って待って』
耳元で突然の爆音、もといルイくんの声が聞こえた。
うるさいなもう。
「ちょっと、音漏れするレベルでうるさいよ」
『ごめーん』悪い事をしたという事を分かっていないようにルイくんは言った。
『言い忘れてたことがあってさ』
「言い忘れ?」
『そうそう』通信機の奥で、椅子の背もたれに身体を預ける音がする。
『武器の情報の番号はねー、5-4-70だよ』
「…はあああああああああ!!!?」
僕は大口を開けて叫んだ。
「そんな大事な事なんで言わなかったの!ヴィアちゃんと分担して探してたんだけど!!」
『あははごっめーん』面白いそうに、ルイくんは笑った。
『探さなくて済むし良かったじゃん』
「そうだけど…てかハッキングは情報偽装があるかもだからって辞めたんじゃないの?」
『え?ハッキングしてないよ?』
「え?じゃあなんで…。」
『ふっふっふっ、こちとら政府の法律無視の非合法組織だよ」
わざとらしいほどにニコニコしたルイくんの顔が思い浮かぶ。
正義の組織じゃないなら僕もうやめようかな。
「で、何番だっけ?」
そのぐらい覚えときなよ、とルイくんはもう一度番号を教えてくれた。
5-4-70。
5は5番目の棚。
4はその棚の4段目。
70は左から数えて70番目の書類。
それが僕たちの求めている政府の武器の書類だ。
書類をとって持ち帰れば、任務は終わり。
それを伝えようと、僕はヴィアちゃんのいる方向に向かった。
「ヴィアちゃーん?
さっきの通信聞いてた?」
10番目の棚の処にヴィアちゃんはいた。
反応なし。聞こえてないかな?
「ヴィアちゃん?」
そう言って駆け寄る。
ヴィアちゃんは1つの書類を眺めていた。
「ねえ、トイフェル」
震えた声が部屋に響く。ヴィアちゃんの声。
「これって、
レイさんの事だよね?」
1つの書類。
人工テレポート能力に関する秘密文書。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。