「俺は伊藤和也。Firstのリーダーやっとる。副リーダーもダラダラしたやつでな。真面目な人が来てくれて嬉しいわ。」
トイフェルに握手をしようと手を伸ばしたのは和服の関西弁の男性。
トイフェルより明るい茶髪をゴムで1つにまとめている。
服からはほのかな梅の香り
「あ、はい。よろしくお願いします。」
男性の平均身長的に低身長の分類に入るトイフェルは、欧州生まれのはずなのに東国の人に身長が負けた感覚に
悔しさを覚えていた。
「あー、まだ慣れんよな。ゆっくり慣れていったらええよ。ここにはお前の親父さんおらんし。」
あはは、と父の事を話しに出され、何も返せなかった。
けど、たかが父親のはずなのだ。
怖がるのは……少しおかしい。
トイフェルはおもちゃであった。
そう、おもちゃ。
頭のよくて、運動もできて、父親を尊敬していて、誰もが憧れる完璧な人間……そんなおもちゃ。
父からは逃げ出せない?もがいても、もがいても、父親という恐怖から出られなくて。
考えただけで恐怖で寒気が来たような。
え、いや。実際寒い。
さっきからエアコンが少し強いなと思っていたが、さらに強くなったように気づく。
またあいつかー、と言いながら応接間から出て行く和服の和也さんを追いかけて、応接間から外を覗く。
外は事務所であった。応接間より紙が散乱しているが。
「レイさん!?何しているんですか!!なんで北極の氷を沢山『テレポート』させているんですか!?
やめてください、寒いです!」
「力使わないとなまっちゃうよー実際に戦うときどうするのさー。」
女性の声とのらりくらりとした男性の声。
男性の方はそう言ってぷくーっと頬を膨らませている。
まるでどこかの我儘な名探偵のような。
「ごめんな〜あれでもあいつ副リーダーやから」
そう言った和也の言葉が頭で重複する。
副リーダー。副リーダー?
あんな如何にも迷惑かけてそうな、オフショルセーター男が!?
イメージとは違いすぎて、トイフェルはショックを受けていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!