第5話

Massacre
51
2018/07/02 10:23
手が赤く染まっていた。

足元も…。


前に進もうと、足を踏み出した途端、人の体のふにっとした感触がした。

「ひぃっ!?」と叫びにほど近い声を出してしまう。



見るだけだったはずなのに。

学ぶだけだったはずなのに。



何でこんなことになったんだろう。








1時間半前

「レイの仕事を適当に見て学べ」と伊藤さん、いやリーダーに言われた。



あんなだらだらした奴の仕事なんて見たくない、そう思ったが、自分は最近入った新人。

リーダーの命令には口を出せなかった。




「…で、なんで木の上で寝てるんですか!?
森からのルートで、敵が領地に入りやすいから守れって言われたんでしょ!?」



先ほどから、ぐーすかぐーすかと器用に木の上で寝ているレイさんを怒った。
まったく、なんて人だ…。



「えー、眠いのに寝ないのはおかしいよ。てか絶対敵来ないし。」


「レイさんはフラグってものをご存知で?」






先ほどから話している領地とは、僕達、平和の部隊が活動している地帯。


政府の者たちは全て追い出した。もちろん公務員、警察官も。
海にも面していて、貿易も可。


ガスや電気も通っている。なぜなら、政府のものを抜いた国民の80%は僕達の味方だから。


メディアも味方。

あとの20%は…。

やめておこう。

『政府に反乱する者僕達に対しての反乱者。』


とでも言っておこう。






領地とは言っても、国土の20分の1にも満たない。

領地の中に住んでいる国民は安全だが、領地じゃない国民は…。


その国民のためにも早く、政府を潰さなきゃ。




そんなことを考えていると、森の中にエンジンの音が聞こえた。唯一この森で車の通れる道から真っ白なトラックが来た。


運転している人はどうやら普通の人っぽい。
大丈夫だ。
きっと定期的にくる配達業者だろう。生活するためにはやはりこの領地だけでは足りない。
時々政府側から違法に注文するのだ。


何もせずに道を通らせようとすると。




「ねえ」上からすとんっ、と何かが降って来た。

いや、降りて来た。トラックの前に。






キキーッという嫌な音がなる。静かな森に響く。

「おい手前!何してるんだ!どきやがれ!!」


と、運転手が怒声をあげた。また森に響く。




「いやあ、ごっめんねーおじさん。
ただ気になることがあってさ。」


笑いながらいつもの気怠げで、のらりくらりとレイは言った。



「実はね、運送会社さんとかにはこの道を通る場合、許可証と車に貼るシールを渡してるんだよね〜。





ねえ?なんで運送会社のトラックじゃないの?どうして、
シール貼ってないの?」

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