手が赤く染まっていた。
足元も…。
前に進もうと、足を踏み出した途端、人の体のふにっとした感触がした。
「ひぃっ!?」と叫びにほど近い声を出してしまう。
見るだけだったはずなのに。
学ぶだけだったはずなのに。
何でこんなことになったんだろう。
1時間半前
「レイの仕事を適当に見て学べ」と伊藤さん、いやリーダーに言われた。
あんなだらだらした奴の仕事なんて見たくない、そう思ったが、自分は最近入った新人。
リーダーの命令には口を出せなかった。
「…で、なんで木の上で寝てるんですか!?
森からのルートで、敵が領地に入りやすいから守れって言われたんでしょ!?」
先ほどから、ぐーすかぐーすかと器用に木の上で寝ているレイさんを怒った。
まったく、なんて人だ…。
「えー、眠いのに寝ないのはおかしいよ。てか絶対敵来ないし。」
「レイさんはフラグってものをご存知で?」
先ほどから話している領地とは、僕達、平和の部隊が活動している地帯。
政府の者たちは全て追い出した。もちろん公務員、警察官も。
海にも面していて、貿易も可。
ガスや電気も通っている。なぜなら、政府のものを抜いた国民の80%は僕達の味方だから。
メディアも味方。
あとの20%は…。
やめておこう。
『政府に反乱する者僕達に対しての反乱者。』
とでも言っておこう。
領地とは言っても、国土の20分の1にも満たない。
領地の中に住んでいる国民は安全だが、領地じゃない国民は…。
その国民のためにも早く、政府を潰さなきゃ。
そんなことを考えていると、森の中にエンジンの音が聞こえた。唯一この森で車の通れる道から真っ白なトラックが来た。
運転している人はどうやら普通の人っぽい。
大丈夫だ。
きっと定期的にくる配達業者だろう。生活するためにはやはりこの領地だけでは足りない。
時々政府側から違法に注文するのだ。
何もせずに道を通らせようとすると。
「ねえ」上からすとんっ、と何かが降って来た。
いや、降りて来た。トラックの前に。
キキーッという嫌な音がなる。静かな森に響く。
「おい手前!何してるんだ!どきやがれ!!」
と、運転手が怒声をあげた。また森に響く。
「いやあ、ごっめんねーおじさん。
ただ気になることがあってさ。」
笑いながらいつもの気怠げで、のらりくらりとレイは言った。
「実はね、運送会社さんとかにはこの道を通る場合、許可証と車に貼るシールを渡してるんだよね〜。
ねえ?なんで運送会社のトラックじゃないの?どうして、
シール貼ってないの?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。