「は?
な、何言ってるんですかレイさん。僕そんな説明受けてないですし…。」
「トイは黙ってて。」
『トイ』。また呼ばれた。
どこかの国ではおもちゃという意味らしい。僕はこの呼び方を嫌っていた。
僕の感情なんか知らないように、レイさん続けた。
「それにいつ、どんな車、なんの目的でくるっていうのは頭に入ってんの。
おじさんの乗ってる車のナンバー、知らないやつなんだよね。なんで?」
表情を変えずにズバッと言ってしまうレイさん。
車から途中降りて来て、突っ立ている運転手。
そして…
僕の身体は何かを察したのか、渡されていたナイフを後ろに用意し、隠していた。。
次、あと少しで…何かが起こる気がした。
運転手が息を吸う。『大きい声を出す』ような息の吸い方。
「全員、突入!!!」
運転手が声をあげた瞬間、道の脇の木の中から人が20人ほど出て来た。
訓練された動き。警察の攻撃部隊だ。
レイさんは、予想していたように剣を用意していた。
あれ?レイさんは剣なんて持ってなかったはずなのに…。
「トイフェル。」
レイさんの真面目な声。
「は、はい!」
と、驚いて返事をする。
「怖いなら逃げていい。これからすることは、ここでは法に当たらないが、政府の方ではきっと当たる。
だから、
逃げてもいいよ。」
『逃げてもいいよ』頭の中でリピートした。できるわけがない。
突入してきた敵はきっと僕の顔を知っている。自分昔テレビに出てたし。
もし、敵が1人でも生き残れば父に伝わってしまう。
だったらバレないようにすれば……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。